2021 Fiscal Year Annual Research Report
超解像ラマンイメージングによる細胞内の水の観測と温度計測への応用
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19H02666
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
梶本 真司 東北大学, 薬学研究科, 准教授 (80463769)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中林 孝和 東北大学, 薬学研究科, 教授 (30311195)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 超解像ラマンイメージング / 構造化照明 / ラベルフリー / 細胞内の水 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度の研究では,2020年度に構築した構造化照明ラマン顕微鏡を用いて,超解像ラマンイメージの取得を行った。まず,試料として直径20 nm程度,長さ数10 μm程度のカーボンナノチューブのバンドルファイバーを対象として,2700 cm-1付近のG’バンドを用いてラマンイメージを取得した。励起波長は532 nmの可視光を用い,対物レンズはNAが1.49の油浸対物レンズを用いた。広視野照明光を用いて取得したラマンイメージでは,200 nm以上に観測されていたカーボンナノチューブが,構造化照明光を用いて複数枚の画像を取得し,フーリエ空間で結合することによって得られたラマンイメージでは,回折限界よりも小さい140 nm程度に観測された。このことから,超解像ラマン顕微鏡の構築に成功したと結論づけた。構造化照明を励起光として取得した各ラマンイメージの露光時間は5秒であり,照明光の構造の位相・向きを変えながら9枚の画像を取得し,フーリエ空間上で結合することで1枚の超解像画像を取得したことから,1枚の超解像ラマンイメージの測定時間は1分以下であり,1分程度の時間分解能で,ラベルフリー超解像観測に成功したと言える。さらに,ウィナーフィルターなどのフィルターを用いることで,よりシグナル/ノイズ比の高い超解像ラマンイメージが取得できることを確認した。また,生細胞を対象として,広視野ラマン顕微鏡を用いてC-H伸縮振動バンドを観測することで,脂肪滴や細胞骨格などの細胞内構造が可視化できることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,構造化照明ラマン顕微鏡を構築することで,細胞のラベルフリー超解像イメージングを可能にし,さらにその顕微鏡を用いて細胞内の水分子や生体分子を直接観測することで,細胞内温度や細胞内夾雑環境を直接可視化することを目的としている。これまでに,構造化照明ラマン顕微鏡を構築し,カーボンナノチューブの超解像ラマンイメージングに成功したことから,超解像ラマン顕微鏡の構築は順調に進んでいると言える。今後は,生細胞や固定細胞を対象として,露光時間やレーザー光強度などを最適化することで,生細胞の超解像ラマンイメージングを可能にする。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる2022年度においては,これまでに構築した構造化照明ラマン顕微鏡を用いて,生細胞の超解像ラマンイメージングを可能にする。特に,これまでに共焦点ラマン顕微鏡を用いて得られているラマンイメージを参考に,脂肪滴や細胞骨格などの細胞内器官の超解像観測を行う。また,水のO-H伸縮振動バンドを用いることで,温度イメージングを行う。O-H伸縮振動バンドを観測領域として広視野照明を用いたラマンイメージングを行う場合には,細胞上部にある培地からのラマン散乱光を同時に観測してしまい,細胞内の水からのラマン散乱を選択的に観測することが難しいことがわかってきた。照明光をより深い角度で入射することで細胞上部の培地からのラマン散乱光の影響を小さくし,細胞内の水からのラマン散乱光を選択的に観測することで,細胞内温度のラベルフリー,超解像での可視化を達成する。
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