2020 Fiscal Year Annual Research Report
XFELと中性子ビームを用いたニトリルヒドラターゼ触媒反応の遷移状態構造の解明
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19H02667
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
尾高 雅文 秋田大学, 理工学研究科, 教授 (20224248)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
當舎 武彦 国立研究開発法人理化学研究所, 放射光科学研究センター, 専任研究員 (00548993)
松村 洋寿 秋田大学, 理工学研究科, 講師 (60741824)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 遷移状態 / 反応中間体 / XFEL / 中性子構造解析 / 触媒反応機構 / 時間分解構造解析 / ニトリルヒドラターゼ / 翻訳後修飾 |
Outline of Annual Research Achievements |
酵素の反応機構を理解する上で反応中間体の構造は本質的に重要である。本研究はXFELを利用した時間分解結晶構造解析と中性子構造解析により,NHaseの遷移状態構造解析を行うことを目的としている。しかし,本年度は,新型コロナウイルス感染拡大のために,XFELと中性子ビームラインの双方の研究施設での実験が出来ない状況であったため,以下の研究を行った。 1) 酸素感受性,温度安定性に優れているPseudonocardia thermophila JCM 3095由来コバルト型NHaseの組換え体発現系を構築した。触媒反応時の水素結合ネットワーク形成に重要と考えられるαサブユニットのSer112をAlaまたはValに(αS112A; αS112V),βサブユニットのTyr68をPheに置換した変異体(βY68F)を作製した。いずれの変異体も野生型に近い触媒活性を有していたため,二重変異体αS112A, βY68FとαS112V, βY68Fを構築した。αS112A, βY68Fについて反応速度論的パラメーターを求めたところ,kcatが野生型の5%以下まで低下しており,結晶中では触媒活性が低下することを考えると,時間分解構造解析に使用可能であることがわかった。 2) コバルト型NHaseの中性子構造解析に向けて大型結晶を得るための条件検討を行った。鉄型NHaseの結晶化条件を参考に条件検討を進めたところ,一辺が約0.3 mmの結晶を得ることに成功した。現在,より大型の結晶を得るために,結晶化条件の最適化とスケールアップを試みている。 3)鉄型NHaseについては,従来 天然の菌体から精製していたが,培地成分として使用していた酵母エキスの販売が終了してしまい,現行品で試したところ,発現量が著しく低下していた。そのため,大腸菌による組換え体に切り替え,現在,大量発現条件を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究では,X線自由電子レーザー(XFEL)並びに中性子ビームラインを使用して回折実験を行う。しかし,これらの放射光施設は,それぞれ,兵庫県のSPring-8と茨城県のJ-Parcにしか存在せず,リモートでの測定は不可能であるため,新型コロナウイルス感染が拡大してしまっていた昨年度は,大学の教育業務に穴を空けることが出来ない状況もあり,いずれに関しても一度も測定をすることが出来なかった。また,これまで,ニトリルヒドラーターゼの精製に使用していたRhodococcus erythropolis N771株の培養に必要な酵母エキスの販売が終了してしまい,現行で販売されている他の製品では発現量が著しく低下してしまっていた。そのため,酵素の発現精製系を大腸菌による組換え体に切り替えることとし,精製・発現系の再調整に時間をとらざるを得ない状況になった。
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Strategy for Future Research Activity |
1) 昨年度に構築したコバルト型NHaseの大量発現並びに反応速度論的パラメーターの評価を行い,結晶構造を決定する。次に,同コバルト型NHase変異体結晶に基質をソーキングし,一定時間反応させたあとで凍結させて反応を停止させ,通常のX線を用いて時間分解結晶構造解析を行う。 2)野生型コバルト型NHaseを使用して中性子構造解析に適用可能な大型結晶の作成条件を引き続き検討する。十分なサイズの結晶を得ることが出来たら,J-Parcへの移動が可能になり次第,中性子構造解析に向けた予備測定を開始する。 3)鉄型NHaseに関しては,大腸菌による組換え体の大量発現条件を確定し,100ミリグラムレベルの大量発現を可能にする。その後,SPring-8ならびにJ-Parcへの移動が可能になり次第,4)以降の研究を行う。 4)フリーズトラップ法を用いて,直接X線結晶構造解析から反応中間体の解析を行う。これにより,反応中間体の構造をトラップできなくても,どの程度の時間軸で反応中間体を形成しているかに関する情報を得ることができる。また,前年度までに決定した条件でNHaseの微結晶を大量調製し,XFELを利用したテスト測定を試みる。方法としては,SFX法の他に,Fixed-target法も検討することとする。 5)中性子構造解析用にNHase結晶の大型化を試みる。基本的な条件は昨年度決定済みであるため,結晶化条件の最適化をさらに進めるとともに,スケールアップを行う。コロナウイルス感染防止対策による実験停止のために令和3年度前期のテスト測定は不可能であったので,後期のビームタイムにおいて,中性子散乱強度のテスト測定を実施する。
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[Presentation] Crystallization of nitrile hydratase for XFEL crystallography2020
Author(s)
Iwatoh, H., Tsujii, H., Matsumura, H., Tosha, T., Shiro, Y., Yamada, D., Kubo, M., Odaka, M.
Organizer
令和2年度化学系学協会東北大会
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