2020 Fiscal Year Annual Research Report
アミロイド形成を促す脂質‐蛋白質間相互作用の分子機構解明
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19H02669
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
乙須 拓洋 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (90564948)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山口 祥一 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (60250239)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 脂質二重膜 / 蛍光相関分光法 / アミロイド |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではモデル生体膜を用い,脂質二重膜上で促進されるアミロイド形成の分子機構理解を目的としている.2020年度はアミロイド形成蛋白質として知られているアミロイドベータとIAPPを用い,緩衝液中ならびに純水中で脂質二重膜と相互作用した際の脂質二重膜の物性,構造変化を蛍光イメージングで追跡した.測定では蛍光脂質を少量含む脂質二重膜をガラス基板上に形成し,上部のバルク溶液に各種蛋白質を加え,その後の脂質二重膜の構造変化をその場観察した.その結果,IAPPにおいて緩衝液中では形成されなかったマイクロメートルサイズの脂質凝集体が純水中では観測された.これはIAPPと脂質二重膜との静電的相互作用によるIAPP-脂質複合体の形成を意味している.さらに興味深いことに,得られた脂質凝集体中で脂質は流動性を有していることが光退色後蛍光回復法の計測により明らかとなった.凝集体中脂質と非凝集領域の脂質間での交換は確認されなかったことから,IAPP-脂質間相互作用により凝集体が形成され,その凝集体の上に脂質二重膜が形成しているのではないかと現在のところ考えている. その一方で,アミロイドベータでは緩衝液中,ならびに純水中においてそのような凝集体が観測されなかった.これらの結果は,アミロイド形成過程における蛋白質―脂質間相互作用の寄与は蛋白質のアミノ酸配列に強く依存していることを示唆するものであると考えている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究により,アミロイド形成蛋白質と脂質との相互作用について詳細な解析が可能となった.特にアミロイド形成蛋白質として広く知られているアミロイドベータとIAPPで脂質二重膜との相互作用に明確な差異があることを見出せたことは,本研究における大きな進展であると考えている.さらに,IAPP-脂質間相互作用において生じた凝集体内で脂質は流動性を有していること,また凝集体と非凝集領域間での脂質移動がないことをはっきりと本研究で示すことができた.これらの結果はアミロイド形成蛋白質と脂質との相互作用を考える上で非常に重要な示唆を与えるものである. 以上の事から,本研究課題が現時点でおおむね順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度の研究では脂質二重膜中蛍光脂質の蛍光イメージングより凝集体の観測,ならびに脂質の流動性を計測したが,蛋白質がどの程度凝集体中に存在しているのか,その詳細についてはいまだはっきりとはしていない.そこで,本年度は蛍光ラベルした蛋白質を用いた同様の実験を行い,蛋白質の分布,ならびにダイナミクスを追跡する予定である. また,アミロイド形成はオリゴマー形成,核形成を経ることが知られているが,どの段階において脂質二重膜との相互作用が重要となってくるのか,その詳細を調べるために蛍光相関分光法に基づく計測を行っていく.この研究をアミロイドベータとIAPPに適用し,2020年度に得られた結果と合わせて考察することで,これら2つのアミロイド形成蛋白質の相違点について分子論的に明らかにしていく.
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Research Products
(2 results)