2021 Fiscal Year Annual Research Report
アミロイド形成を促す脂質‐蛋白質間相互作用の分子機構解明
Project/Area Number |
19H02669
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
乙須 拓洋 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (90564948)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山口 祥一 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (60250239)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 蛍光相関分光法 / 脂質二重膜 / アミロイド |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではモデル生体膜を用い,脂質二重膜上で促進されるアミロイド形成の分子機構理解を目的としている.2021年度はアミロイド形成蛋白質として知られているIAPPを用い,アミロイド感受性色素であるチオフラビンTを用いた凝集過程の追跡,ならびに蛍光ラベルしたIAPPを用いたIAPP拡散速度変化の追跡を行った.前者の実験の結果,IAPPはアミロイド形成開始後約70分間はアミロイドの形成は起こらず,その後加速度的にアミロイド形成が促進することが明らかとなった. この点についてより詳細に調べるために,蛍光ラベルしたIAPPを用いて,アミロイド形成開始後異なる経過時間での蛍光相関分光法によるIAPP拡散速度計測を行った.IAPPの拡散速度はIAPPの凝集サイズに敏感であることから,この測定により開始後70分間の間にどのような構造変化,またオリゴマーへの転移が起こっているかを調べることが可能となる.計測の結果,IAPPの拡散速度は70分の間ほとんど変化が見られなかった.この結果は,IAPPがアミロイド形成に至る前に形成するオリゴマーの分子サイズ(流体力学的半径)はモノマーとほとんど区別ができないことを示唆するものとなった.IAPPが構造変化を伴わずにオリゴマーとなった場合流体力学的半径の変化が起こることから,今回の結果はIAPPオリゴマーにおいてIAPPはモノマー時よりもよりコンパクトは構造へと転移している事を示唆する結果となった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究ではIAPPをサンプルとして使用しているが,既報のIAPPアミロイド研究において,アミロイド形成にかかる時間には大きなばらつきが存在している.これは実験条件の些細な違いによりアミロイド形成過程が大きく変調されることを示唆しており,実際にそのような報告例も存在する.実際の我々の計測においても,実験データの再現性が低く,またその原因の特定に多くの時間を取られることから,進捗が少し遅れている状況にある.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により,IAPPのアミロイド形成においては約70分程度,アミロイド形成が確認できないラグタイムが存在することが分かった.また,この70分の間に形成するオリゴマーはモノマーと流体力学的半径がほぼ同じであることが分かった.これはつまり,分子サイズの観点からモノマーからオリゴマ―への転移が判別できない事を示唆している.この点について,過去の研究よりモノマーからオリゴマ―転移において脂質膜との親和性が変化するとの報告があることから,アミロイド形成開始後から各経過時間におけるサンプルについて,脂質二重膜との相互作用を解析し,どのような膜親和性の変化が起こっているかを解明していく.in vivoの研究においても,オリゴマー種が最も毒性が高いことが報告されていることから,膜への親和性変化の計測からアミロイド形成蛋白質の細胞毒性に関する知見を得たいと考えている.
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