2019 Fiscal Year Annual Research Report
Energetics of the water oxidation reaction in photosynthesis: Elucidation by spectroelectrochemistry
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19H02674
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
加藤 祐樹 名古屋大学, 理学研究科, 講師 (10376634)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 光化学系II / 水分解反応 / 赤外分光法 / 分光電気化学法 / 電子伝達反応 / 酸化還元電位 / マンガンクラスター |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、光合成反応のうちで最大の謎とされている水分解・酸素発生反応におけるエネルギー論の解明を目的に、水分解の反応部位であるマンガンクラスターの酸化還元電位Emの実測に挑むものである。これまでマンガンクラスターが作動する電位の実測例はなく、水分解反応におけるエネルギー論は全くの推測に留まる。本研究では、フーリエ変換赤外(FTIR)差スペクトル法を分光電気化学法に適用した計測系を駆使してEmの実測に取り組むことにより、天然の水分解反応部位の作動電位を物理化学的に解析する。初年度にあたる令和元年度には、+200 mVから-200 mVにおける電位領域で還元しながらFTIR分光電気化学測定を行ったところ、マンガンクラスターは全く還元されないことを見出した。一方で、第一キノン電子受容体QAの還元反応が見られ、ネルンスト解析を行ったところ、シアノバクテリアでは酸化還元電位は-128 mV、高等植物(ホウレンソウ)では-163 mVと決定された。さらに、マンガンクラスターが損傷した場合においてもほとんど変わらないことが見いだされ、従来いわれてきたマンガンクラスターの損傷によるQAの酸化還元電位のシフトは、用いられてきた蛍光分光法によるものであると考えられる。 また、マンガンクラスターのS状態サイクル反応において、光化学系II微結晶を用いた解析を行った。PSII微結晶をATRシリコンプリズム上に載せ、光誘起FTIR差スペクトルを測定したところ、第2閃光以降の差スペクトルの大きさは小さくなっているものの、溶液と同形状の差スペクトルが得られた。したがって、PSII微結晶において各中間状態の構造は溶液試料の場合と同様であることが分かった。このことは、今後のX線結晶解析によって得られる構造が生理的に意味を持つことを支持するものといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の目標であった、FTIR分光電気化学計測によるマンガンクラスターの酸化還元状態を追跡することができたのは大きな成果といえる。また、付随的とはいえ第一キノンQA酸化還元電位を計測することができ、マンガンクラスターの損傷による電位変動について明らかにすることができたのも大きな成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、マンガンクラスターの酸化還元電位計測を最優先に実験をすすめる。また、S0/S1遷移のEmに近いとされるチロシン残基の酸化還元電位の計測を試み、さらにS2遷移からの緩和時間との関連性を調べることにより、水分解反応におけるエネルギー論を明らかにしていく。
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Research Products
(9 results)