2020 Fiscal Year Annual Research Report
Development and applications of quantum-chemical methods to treat large cells for periodic materials
Project/Area Number |
19H02682
|
Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
Fedorov Dmitri 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (60357879)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西本 佳央 京都大学, 理学研究科, 助教 (20756811)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 電子状態 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に開発したFMO-DFTB/PBCの理論とプログラムを用いて、フラグメント分割と非分割の比較を行い、エネルギーとその解析勾配の精度を確認し、さらに高速化ができていることを実証した。水中での蛋白質とリガンド複合体を計算し、溶質の濃度がアミノ酸残基とリガンドの相互作用にどのような影響を及ぼすのかを明らかにした。 本研究課題で用いるFMOには、二つの大きな問題が知られている。一つ目は、精度の都合上、蛋白質をフラグメントへ分割する際、アミノ酸残基をCO基だけずれる点である。もう一つは、官能基単位での寄与を算出することができない点である。今年度は、これら両方の問題を解決する分配解析を開発した。分配解析では、FMO-DFTBのフラグメントの結果を事後処理することによって、エネルギー等の物性を化学的な直感と一致する単位(セグメント)に再計算する。さらに、リガンドと官能基ごとの相互作用を算出し、珪中薬剤設計にとって新世代の手法を開拓した。この論文は国際雑誌の表紙に掲載された。 別の問題点として、自由エネルギーと温度の影響を扱うのが困難であった。そこで今年度は、振動エネルギーに対して、自由エネルギーを含む熱力学量をFMOで容易に計算する枠組みを開発した。さらに、その熱力学量を化学的な直感と一致する単位(セグメント)に分割する事で、アミノ酸残基や官能基ごとの寄与の計算に成功し、計算科学の予測力を高めた。この振動エネルギーの解析は、DFTBに限らず、汎用的であるため、高精度の量子化学計算法による振動エネルギーの解析も可能である。 分子・液体・固体でFMO-DFTBの電子密度計算を実現した。さらに、分子相互作用による高次の電荷移動の振る舞いを明らかにした。開発した手法の有用性を明確にするため、約二万原子を含む蛋白質とリガンドの複合体の電子密度を計算し、どのような電荷移動が起こるかを明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画していたFMO-DFTB/PBCの基礎的な開発を実現し、その妥当性を系統的なテスト計算で明らかにした。応用計算に役立つ機能として、分配解析を開発し、それを蛋白質の電子状態の解明に用いる準備をした。結晶表面の吸着熱等を計算する際に、温度の影響を取り込むことができるよう、振動エネルギー計算の枠組みと官能基等の解析手法も用意した。FMO-DFTB/PBCの応用計算の準備も始め、周期系の分割等の計算の準備を進めている。水和中化学反応経路を特定する為に、初期段階の計算を始めている。以上を考慮すると、本研究課題はおおむね順調に進展していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
来年度は、開発した計算法を本格的な応用計算に用いる。具体的には、(1)水分子を含む蛋白質の結晶の構造最適化(原子位置と格子定数の最適化)を行い、実験で得られる構造の解像度等の問題を解決する。(2)水中での有機分子の化学反応の自由エネルギーを計算し、実験と比較する事で計算法の妥当性を明確にする。(3)氷の分子結晶表面における有機分子の吸着をシミュレーションし、分子の濃度が吸着過程にどのような影響を及ぼすのかを明らかにする。(4)有機分子に対して多孔性固体材料(ゼオライト)の触媒機能を解明し、化学企業で役立つ技術の実例を確立する。
|
Research Products
(4 results)