2022 Fiscal Year Annual Research Report
素粒子ミュオンによる高エネルギー開殻分子構造の創出と新規スピン機能ユニットの開拓
Project/Area Number |
19H02685
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
伊藤 繁和 東京工業大学, 物質理工学院, 准教授 (00312538)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ラジカル / ミュオン / 複素環構造 / イミドイルラジカル |
Outline of Annual Research Achievements |
ミュオンはプロトンの1/9の質量をもつスピン I=1/2 の素粒子で、加速器から発生させて有機分子に打ち込むと、エネルギーを減少させながら電子を捕獲して「軽い水素原子」に相当するミュオニウムに変化する。本研究では、主に高周期元素を含む縮環共役化合物のミュオニウム付加反応に着目し、通常の化学的手法では同定の難しい未知の高エネルギー開殻分子構造を見出す。 まず、ペリ位にトリフルオロメチル基を導入して安定化された9-ホスファアントラセンのミュオニウム付加体の観測と構造同定に成功した。反応性の高いリンの位置にほぼ選択的にミュオニウムが付加することは容易に確認できた。その一方でミュオンの軽同位体効果によって生じる分子構造変化の解析にかなり苦戦したが、最終的にはホスファアントラセンの平面骨格が保たれた準安定構造として生成していることを突き止めた。この成果は掲載論文誌でHot Paperに選出された。これと平行して、高周期元素を含む新規な縮環共役化合物の合成を達成した。種々検討を重ねた結果、テトラフェンの高周期類縁構造を単離同定することに成功した。 最終となる2022年度には、新たな研究対象としてイソニトリルに着目した。これは、ジフルオロメチルラジカル前駆体となるボレートを用いることで、ビフェニルイソニトリルへのラジカル付加および分子内環化によってフェナントリジンが生成することをデモンストレーションした際に、中間体のイミドイルラジカルに関する情報を得たいと考えたことによる。横磁場ミュオンスピン回転(TF-muSR)測定を実施したところ、ミュオニウムが付加して予想通りにイミドイルラジカルが生成することを確認した。さらに、温度可変条件で測定を行い、分子内環化反応の速度定数から活性化エネルギーを実験的に見積もることもできた。
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Research Progress Status |
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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