2019 Fiscal Year Annual Research Report
反芳香族化合物の系統的発光特性評価と希土類様発光色素の創製への展開
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19H02688
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山下 健一 大阪大学, 理学研究科, 講師 (40468145)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 反芳香族化合物 / 反Kasha発光 / 有機発光色素 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、構造、対称性の異なる3種類の反芳香族イソフロリン色素を合成し、その発光特性の評価を行った。その結果、今回評価したすべてのイソフロリン色素からS2発光、すなわちKasha則に従わない発光を観測することに成功した。また、これらの発光は、通常の蛍光分光光度計で観測可能であったことから、その発光量子収率が過去に報告されているS2発光色素のものと比較して著しく高いことが示唆された。相対発光量子収率の測定の結果、合成したイソフロリン色素の一つは約3%の値を示し、これは、研究者が知る限りで単独の有機発光色素の中で最も高い反Kasha発光量子収率であった。また、この発光量子収率は、励起波長に依存し、特にS3状態への遷移に相当する吸収帯で励起した際には、S2発光強度および量子収率は著しく小さくなった。これも、Kasha則に従う通常の発光色素には見られない特異的な現象である。 一方、他の二つの色素では、量子収率はそこまで高くないものの、S2発光に加えて、S1からの発光が見らえた。さらに、そのS1発光は、近赤外領域に観測された。すなわち当初の目標でもあった多重発光特性、近赤外発光特性を実現した。 以上のことから、反Kasha発光特性は、少なくとも反芳香族イソフロリン類において普遍的にみられる現象であることを明らかにした。今後、今年度導入した発光量子収率測定装置などを用いて、発光の帰属を明確にするとともに、発光量子収率のさらなる向上、イソフロリン以外の反芳香族ポルフィリノイドの発光特性の評価を行うことで、反Kasha発光色素の分子設計の新たな指針を示すことを目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目標であった反芳香族イソフロリン類の反Kasha発光特性をおよそ明らかにすることができた。さらに、多重発光特性、近赤外発光特性を示唆するデータも得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
今回、反Kasha発光特性は、少なくとも反芳香族イソフロリン類において普遍的にみられる現象であることを明らかにした。本研究の最終目標の一つは、反Kasha発光特性が、イソフロリンに限らず、反芳香族化合物に一般的にみられる現象であることを明らかにすることである。そのため、当初の計画通り、イソフロリン以外の反芳香族ポルフィリノイドを合成し発光特性の評価を行う。特に、パイ電子の数の異なるものを中心に調査を行う。この実験を通じて、さらなる構造、反芳香族性―発光特性相関を明らかにする。 また、発光量子収率測定装置などを用いて、発光の帰属およびダイナミクスを明確にする。得られた知見を元に、反Kasha発光量子収率のさらなる向上、具体的には10%以上をめざす。
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