2019 Fiscal Year Annual Research Report
自己集合化学とペプチド化学の協奏による人工酵素の創出
Project/Area Number |
19H02697
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
澤田 知久 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (70625467)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 自己組織化 / ペプチド / 配位結合 / フォールディング / ナノ空間 / 人工酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
分子の集合体形成によって得られる様々なナノサイズの空隙(ナノ空間)を構築する自己集合化学と、アミノ酸配列に基づくペプチド鎖のとりうる配座とその機能解明を行うペプチド化学を融合させることにより、人工酵素の化学合成を目標に研究を実施している。すなわち、空間的に仕切られた人工のナノ空間内に、 さまざまなアミノ酸側鎖や活性中心となる金属イオンを精密集積させた人工ナノ空間を独自に構築し、特異な化学反応場の構築を目指している。 本年度の研究では、三残基のペプチド配位子と銀塩の結晶化によって細孔性ペプチド錯体を合成し、その細孔内で誘起される化学反応の探索を行った。まず、ペプチド配列と銀塩の条件検討により、1.8 nm x 0.7 nmの長方形状の一次元細孔をもつペプチド錯体の単結晶の作成に成功した。この単結晶をさまざまな液状の有機化合物に浸すことで、単結晶ー単結晶変換の様式で細孔内に有機分子を包接させることができ、単結晶X線構造解析によりその分子構造を精密に観測することが可能であることを見出した。さらに、ゲスト分子としてピルビン酸メチルを包接させた場合には、そのカルボニル基へ溶媒のエタノール分子が求核付加した不斉ヘミアセタール構造が細孔内で生成することも見出した。不安定な直鎖のヘミアセタール構造が結晶構造で観測された例はほとんど存在せず、トリペプチドと銀イオンで構成される細孔がその安定化を可能にしたと言える。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細孔性ペプチド錯体へのゲスト分子の包接を検討している中で、一例の特異なヘミアセタール化反応の観測に至った。これにより今後、様々なカルボニル化合物および類縁体への求核付加反応の展開が期待できる。よって、本研究は、順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
まず、より広範な有機化合物に対して、細孔性ペプチド錯体への内包を検討する。これにより、細孔内へ包接できる化合物の(1)分子サイズ、および(2)官能基の適用範囲を明らかにする。また、包接されたゲスト分子の分子構造を詳細に解析することにより、細孔内で誘起される特異な配座も明らかにする。さらに、すでに実現したヘミアセタール化反応を足掛かりとし、カルボニル基への求核付加反応などを広く探索し、細孔内での不安定反応生成物の捕捉や、触媒的な化学変換の実現を目指す。
|