2020 Fiscal Year Annual Research Report
ロタキサン形成により外界から遮断された“分子封止型色素”の光化学と応用
Project/Area Number |
19H02699
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
井上 将彦 富山大学, 大学本部, 理事・副学長 (60211752)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大石 雄基 富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 助教 (00778467)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ロタキサン / シクロデキストリン / バイオプローブ / 円偏光発光 / フォトクロミック材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
シクロデキストリン内にパイ共役系蛍光分子を封止したロタキサン型蛍光色素は,シクロデキストリンの包接により特定数の蛍光分子が外部環境から遮断されているので,量子収率が溶媒に依存しない,極めて耐光性が高い,濃度に依存せずエキシマー発光を示す等,特異な光物性を示す。この封止化による特長を活かし,①究極の単一分子イメージングに適したバイオプローブ,②多彩なカラーバリエーションを有する円偏光発光分子,③薄膜状態でも安定して異性化するフォトクロミック分子,の3種の革新的な機能性分子を開発する。そして本研究を通し,未だに報告例の少ない“分子封止型色素”を色素の一分野として確立するこ とを目指す。 これまでに,①に関しては,スクアリリウム色素包接ロタキサンの合成に取り組んだが,合成したロタキサンの安定性に問題があったため,色素の変更を検討している。②については,ピレンを2成分包接した[8]ロタキサンや[7]ロタキサンをテンプレート制御クリック法を利用して合成することに成功した。また,それらのロタキサンは CPL 活性を評価したところ,高い異方性因子を示すことが明らかとなった。さらに,包接するするシクロデキストリンによって,ロタキサンのCPL活性が変化することを明らかにした。さらに,封止する色素が1成分でも CPL 活性を示すロタキサンの合成にも取り組んでいる。③に関してはスピロピランだけではなく,アゾベンゼンを包接したロタキサンの合成を目指し,その前駆体の合成を行っている段階である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
スクアリリウム色素包接ロタキサンはロタキサン化反応中に色素が壊れてしまう問題点があったため,色素の変更を検討している。現在,ピリジニウム部位を共役させたピレン誘導体を用いることで長波長側の光で励起が可能なロタキサンの合成に成功している。 CPL活性を示す[8]ロタキサンや[7]ロタキサンの合成は確立しており,そのCPL活性も明らかにしている。現在では,成分数の少ないロタキサンでも CPL 活性を示すことができないのかを検討している。 フォトクロミック型ロタキサンに関してはその合成にすでに着手しており,合成経路の確立を順調に進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
ピリジニウム部位を共役させたピレン誘導体のロタキサン化は合成収率の改善を進める。また,ピレンをペリレンに変更したり,共役を伸ばすことでより長波長側の発光を示すロタキサンの開発を目指す。 CPL活性を示すロタキサンに関しては,成分数の少ない[5]ロタキサンで高い CPL活性をの実現を目指す。内部の色素がキラルにねじれる分子設計を探索する。 フォトクロミック型ロタキサンについては,合成法を確立し,その光物性を明らかにする。 さらに,分子封止型色素の化学の拡張を目指し,リン光を効率的に発するロタキサンの開発にも取り組んでいる。効率的に三重項励起状態へ項間交差する色素の封止を検討する。
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