2020 Fiscal Year Annual Research Report
Application of Antiaromatic Properties Based on the Understanding of Antiaromaticity using Stable Dioxaporphyrins
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19H02703
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
清水 宗治 九州大学, 工学研究院, 准教授 (70431492)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 反芳香族性 / ポルフィリン / 典型元素 / 常磁性 / 伝導性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では研究代表者がポルフィリンの構造物性相関に基づき分子設計し合成した、安定な反芳香族分子である5,15-ジオキサポルフィリン(DOP)を用いて、①DOPの合成化学の開拓、②DOPを基盤とした新規分子の合成、③物性研究、④応用研究を展開することで、当該分野研究を推進する。合成研究および基礎物性研究を通して、反芳香族性の真の理解から、反芳香族分子が本来持つ(1)常磁性、(2)非線形光学特性、(3)伝導特性、(4)3次元芳香族性、(5)Baird芳香族性などの有用物性の発現に基づく応用研究として、単分子磁性から分子メモリへの展開、二光子吸収特性と励起三重項を利用した光線力学への展開、両極性有機FETへの展開に挑戦する。 当該年度はDOP合成の収率と反応スケールの改善を行い、各基質における最適な反応時間とスケールを確立した。また、DOPの化学酸化による芳香族性ジカチオンへの変換を試み、ラジカルカチオンと芳香族性ジカチオンの単離と構造決定に成功した。ジカチオンは予想どおり、芳香族性に起因して、NMRスペクトルにおいて、反磁性環電流効果が見られた一方で、吸収スペクトルは置換基の影響により、大きくブロード化し、近赤外領域に広がって観測された。さらにジカチオンを酸化したところ、環開裂が起こり、ジケトン生成物が得られた。この化合物の生成過程は生体におけるヘムの代謝過程に類似していることから、オキサポルフィリン類縁体に特有の反応性であると考えることができ、現在、詳細について検討を行っている。 STMブレイクジャンクション法を用いた単分子伝導度測定はコロナの影響もあり、予定よりも進捗が遅れている。一方で、STM基盤上でのDOP分子の配列について、興味深い知見が得られており、論文投稿を準備しているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
DOP合成に関しては反応気質ごとに反応条件が最適化できていることから、当初予定通りの進捗が得られている。また、DOPの酸化生成物に関しては、構造同定に成功し、物性研究へと展開できていることから、当初予定よりも進展していると評価できる。一方で、STMブレイクジャンクション法を用いた単分子伝導度測定に関しては、測定に用いる分子の合成段階にあることから、予定よりも遅れている。テーマにより進捗の度合いにバラツキがあるが、全体としてはおおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の研究成果について、追加のデータ収集を行った後にいくつか論文投稿を行う予定である。DOPの酸化生成物に関する論文投稿では、酸化生成物からDOPへの変換の可能性について明らかにする必要があり、今後、検討を行う。また、STMブレイクジャンクション法による単分子伝導度測定に関しては、共同研究先と測定対象分子の設計について、議論を行う必要がある。対象分子について、方針が定まった後、合成を急ぎ進め、早い時期に測定研究に着手したい。また、単分子伝導度では理論計算を用いたモデル系の構築も不可欠であり、この点においても共同研究先と議論しながら進める予定である。
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