2020 Fiscal Year Annual Research Report
Phosphorescence manipulation by boronic acid-based supramolecules
Project/Area Number |
19H02704
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
久保 由治 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 教授 (80186444)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | ボロン酸 / 燐光 / 超分子 / チオフェン / ポリビニールアルコール / スルホローダミン B / フェルスター型エネルギー移動 |
Outline of Annual Research Achievements |
励起三重項状態に着目した光機能材料の研究が盛んにおこなわれている。有機室温燐光は残光現象など蛍光にない特色を有することから、その材料化は魅力ある検討課題である。本年度は、ボロネート超分子が固体分散状態で室温燐光(RTP)特性を発現することに端を発した取り組みをおこなった。 (1) チオフェンボロネート類のRTP特性:チオフェンは代表的なπ共役複素環分子の一つであり、有機太陽電池用部材として盛んに用いられている。我々は硫黄原子上にn軌道をもつことに着目し、ボロン酸を組み合わせることでRTP特性を期待した。結晶固体中においてチオフェン-2.5-ジボロン酸にRTP性は認められなかったが、ビス(ネオペンチルグリコールボリル)チオフェンでは、固体中で緑色の遅延発光(λem = 539 nm、λex = 250 nm、τp = 86.1 ms) を示した。そのX線結晶構造解析及び量子化学計算の結果から、分子間電荷移動相互作用が燐光特性に寄与しているものと考察した。一方、固体結晶は機能化展開において制限が大きい。そこで、酸素バリア性をもつポリビニールアルコール(PVA)にチオフェン-2.5-ジボロン酸を架橋させた。得られたフィルムはシアン色のRTP性を発現した。そして相補色発光を示すスルホローダミン B をドープしたところ、そのフィルム残光は、スルホローダミン Bのドープ量に依存してマルチ発光を発現した。 (2)残光センサーの調製:研究代表者らが開発したボロネート自己集合粒子(BP)は緑色のRTP特性をもつ。そこで、粒子界面に担持可能なジヒドロキシボリル基を有する金属イオン応答型ローダミン色素(RD)を新規に合成した。そのRDを表面修飾したRD-BPは金属イオンに応答した遅延発光を示し、BPの励起三重項からRDの励起一重項へのフェルスター型共鳴エネルギーに基づいて解析された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
複数の励起過程を経て輻射失活する燐光は、周囲環境の影響を受けやすく機能化は容易ではない。今年度、酸素バリア機能を有するポリビニルアルコールをマトリックスに用いたところ、ボロン酸エステル結合を通して簡便にπ共役分子を組み込み、有機室温燐光(RTP)特性を引き出すことに成功した。しかしながら、その一方でどんなπ共役分子系でもRTP性が発現するとは限らない。構造と燐光物性との相関性を明らかにする必要がある。
|
Strategy for Future Research Activity |
水酸基豊富なポリビニルアルコール(PVA)は酸素バリア性を持ち、ゲルフィルムになる性質を有する。これは燐光機能材料を創出する点から都合がよい。今後は、燐光発現機構に関する知見を生かしながら、残光センサー等の具体的機能材料開発を推進する。 (1)残光センサーの開発:ある金属イオンと反応して燐光性を発現する分子をPVAにドープする設計をおこなっている。これまでの検討より、どのような構造になればPVA中で燐光を発現するかについて知見を得ているので、今年度は目標とする燐光材料を提案したい。 (2)光学活性ボロネート分子系を用いた発光性キラル材料への展開:分子不斉と発光性との相互作用に着目した取り組みを検討する。
|