2020 Fiscal Year Annual Research Report
機能性材料を指向するピンポイントフッ素化した多環式芳香族化合物の自在合成
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19H02707
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
市川 淳士 筑波大学, 数理物質系, 教授 (70184611)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 有機化学 / 合成化学 / 触媒・化学プロセス / 電子・電気材料 / 含フッ素有機化合物 / 医農薬 / フッ素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、ピンポイントフッ素化した多環式芳香族化合物 (F-PAH) の自在合成を指向し、(1) 含フッ素アルケンの環化法の完成、(2) 各種環化の組合せ法の確立、(3) F-PAH新材料の開発 を大きな柱として、検討を行なっている。 これまでの標的分子は、ベンゼン環のみからなる多環式芳香族化合物であった。そこで令和2年度は標的となる化合物を拡大し、ピンポイントフッ素化したヘテロ環化合物へと展開する可能性を探った。 検討を行った結果、銅(I)触媒によるピンポイントフッ素化トリアゾールの合成法を開発した。具体的には、1,4-ジオキサン溶媒中、触媒量の塩化銅(I)と1,10-フェナントロリン (1:1) 存在下、2,2-ジフルオロビニル亜鉛(II)クロリドに種々のアジドを作用させた。ジフルオロビニル亜鉛(II)クロリドとアジドの[2 + 3]付加環化反応が進行し、1位に置換基を有する4-フルオロトリアゾールを高収率で与えた。なお、2,2-ジフルオロビニル亜鉛(II)クロリドは、市販されている1,1-ジフルオロエチレンから、容易に調製が可能である。 フッ素化トリアゾールには、医農薬としての用途も期待される。また本反応では、2,2-ジフルオロビニル亜鉛(II)クロリドがフルオロアセチレン等価体として作用している。フルオロアセチレンは不安定な化学種であり、単離して物質合成に利用することは困難であったが、本研究により、その等価体を開発したことになる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度は、2,2-ジフルオロビニル亜鉛(II)を用いるピンポイントフッ素化トリアゾールの合成法を開発した。この成果は、ピンポイントフッ素化された多環式ヘテロ環化合物合成に向けて更に展開する基盤となる重要な知見である。またその過程で、2,2-ジフルオロビニル亜鉛(II)クロリドがフルオロアセチレンの等価体となることも明らかにした。フルオロアセチレンは多環式骨格を構築する上で魅力的なビルディングブロックであり、今後の課題達成において重要な役割を果たす。以上のことから、本研究課題は順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの検討で、曲折型ピンポイントフッ素化多環式芳香族化合物の合成に関する基礎を確立した。そこで今後は、直線型ピンポイントフッ素化多環式芳香族化合物の合成法を確立し、網羅的なF-PAH合成の完成を目指す。具体的には、2-トリフルオロメチル-1-アルケンにルイス酸を作用させて生じるα-フルオロカルボカチオンを利用するアセン合成法を検討する。
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Research Products
(12 results)