2019 Fiscal Year Annual Research Report
Dynamic Stereochemical Control of Halogen Bonding in Reaction Sphere
Project/Area Number |
19H02709
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
荒井 孝義 千葉大学, 大学院理学研究院, 教授 (80272483)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鍬野 哲 千葉大学, 大学院理学研究院, 特任助教 (50733531)
飯田 圭介 千葉大学, 大学院理学研究院, 助教 (70719773)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ハロゲン結合 / ヨウ素 / 不斉触媒 / ラクトン / 亜鉛 / カルボン酸 / アルケン / DFT計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
ハロラクトン化は、ハロゲン化とラクトン骨格の形成を一挙に行える魅力的な反応である。我々は光学活性ビスアミノイミノビナフトール配位子と酢酸亜鉛からなる亜鉛三核錯体(tri-Zn)を開発し、触媒的不斉ヨードラクトン化を高収率、高立体選択的に達成している[Chem. Comm. 2014, 42, 8287-8290]。 初年度の研究は、このtri-Zn錯体を用いる触媒的不斉ヨードラクトン化について精密な遷移状態解析を行い、その触媒サイクルを明らかにした。 NMR実験ならびにESI-MS解析から、tri-Zn錯体を用いる触媒的不斉ヨードラクトン化反応は、基質のカルボン酸が亜鉛カルボキシレートとなって反応が進行することが示唆された。一方、NISを用いるヨードラクトン化は、ヨウ素の添加によって著しく加速され、tri-Zn錯体とNIS-I2が1:1の相互作用を有することもUV-Vis解析によって示された。DFT計算による遷移状態解析を行った結果、基質の亜鉛カルボキシレートはNIS-I2試薬によって活性化され、NISは配位子と水素結合を形成していることが示唆された。オレフィンをヨウ素化するのはNISのヨウ素ではなくヨウ素分子であることを初めて明らかにした。 上述の遷移状態解析は、tri-Zn錯体がカルボン酸とハロニウムイオンの双方を制御できることを示している。そこで、本触媒系をより難易度の高い非対称ヨードラクトン化反応に適用した。オレフィン部位を二つ有する対称なカルボン酸基質に対してtri-Zn錯体を触媒に用いてヨードラクトン化を行うと、高いジアステレオ選択性をもって反応が進行し、未反応のオレフィン部位を有する5員環ラクトンを高い不斉収率で得ることに成功した。生成物は、未反応のオレフィン部位を有していることを活かし、ラジカル反応によるかご状化合物の合成にも成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
不飽和カルボン酸を基質とするハロラクトン化反応は、医薬品や天然物などの化合物にみられるラクトン骨格、および多様な構造変換が可能なハロゲン-炭素結合を一挙に形成することの可能な重要な反応である。このため、本反応を立体選択的に促進する不斉触媒の開発は活発に検討されている。その中で、我々が開発した亜鉛三核錯体(tri-Zn)は完璧な立体選択性で目的とするヨードラクトンを与える世界最高活性の触媒である。今回の研究で明らかになった遷移状態解析は、我々の触媒が、一つの金属錯体上でイオン結合、水素結合、ハロゲン結合の3種が協働して高立体選択的な反応を促進している世界初の触媒であることを明らかにした。また、DFT計算による遷移状態解析を行った結果、基質の亜鉛カルボキシレートはNIS-I2試薬によって活性化され、NISは配位子と水素結合を形成していることが示唆された。オレフィンをヨウ素化するのはNISのヨウ素ではなくヨウ素分子であることが初めて明らかとなり、有機化学の教科書を書き換えるようなインパクトの大きな発見である。 今後の研究計画にあるヨードエステル化にも予備的知見を蓄えることができ、芳香族化合物のヨウ素化についてもヨウ素結合を活用した高活性触媒の開発の端緒を得ている。 このように、研究は当初計画を超えて、極めて順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の研究で明らかにした高活性I3+化学種による活性化は、オレフィンの活性化のみならず、芳香族化合物の活性化にも魅力的である。共同研究者の飯田は、既に「ジフェニルジスルフィドが芳香族のヨウ素化に優れた触媒活性を示す」ことを見出している。ソフト性の高い硫黄が、NISとハロゲン結合を形成してハロゲン化反応を加速していると理解できる。屈曲型高活性I3+化学種に置き換えることで、更なる高活性化が期待でき、従来法では立体的な嵩高さが故に困難であった三置換ベンゼンのヨウ素化を目指す。これは造影剤などの医薬の合成において、最終段階で化合物をヨウ素官能基化する実用性の高い科学の創製となる。飯田は、DNA鎖中に見いだされるグアニン4重鎖を安定化させるG4リガンドの創製を推進しており、ヨウ素を導入したヨウ素医薬の創製を目指す[担当:荒井、飯田] 。 一方、研究計画に従って、電気陰性度の大きなヨウ素が持つ本来のアニオン化学種を用いる反応開発を推進する。本項では、直線性I3-化学種を形成させることによってソフト性の高い求核種とする反応開発を目指す。例えば、金属ヨウ化物を用いた錯体やヨウ化アンモニウム塩にI2を作用させると直線性I3-化学種が発生し、これを求核触媒とすることで、Baylis-Hillman型の反応の開発を目指す[担当:荒井]。
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Research Products
(13 results)