2020 Fiscal Year Annual Research Report
古典的不斉源からの脱却による高エナンチオ選択的触媒反応の実現
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19H02710
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
橋本 卓也 千葉大学, 大学院理学研究院, 特任准教授 (20437198)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 触媒的不斉合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではインダノールを中心とする非古典的なキラルビルディングブロックを利用した各種不斉触媒反応の開発に取り組んでいる。2019年度はキラルセレン触媒とキラルヨウ素触媒反応の開発を中心に取り組んだ。2020年度にはそれら研究が実を結び、キラルヨウ素触媒に関する研究成果をJACS、Synthesis、Asian JOCの3つの雑誌に報告することができた。 また未発表ではあるが、インダノール骨格を有するキラルセレン触媒による不斉反応開発も大きく進捗し、高エナンチオ選択的不飽和ラクタム合成法が様々な基質に対して汎用性があることが実証された。得られた不飽和ラクタムの有用性を示すための生成物誘導化にも成功し、簡単に多置換ラクタムを立体選択的に合成できる手法が確立した。さらに同セレン触媒を用いた分子間反応においても、広い基質一般性でアルケンのアリル位クロロ化、窒素化、酸素化が進行することを実証した。これら成果は最終年内に成果発表できる目途がついている。 さらに遷移金属触媒反応への展開への足掛かりとして、独自に銅触媒を用いた脂肪族アルケンのアミノシアノ化反応を開発した。この新たな不斉点を生じる反応にキラルビズオキサゾリンなどの古典的な不斉配位子を適用してみたところ、低いエナンチオ選択性しか発現しないことを確認した。最終年度にはこれまでに合成されたインダノール骨格を有する不斉配位子を本反応に導入し、高エナンチオ選択的アミノシアノ化反応の実現を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では非古典的な不斉反応場を適用し、これまで高エナンチオ選択的反応が実現されてこなかった反応系における飛躍的な改善を試みている。2020年度にはキラルヨウ素触媒に関する研究成果をJACS、Synthesis、Asian JOCの3つの雑誌に報告することができている。またキラルセレン触媒に関する研究においても、複数の反応系でこれまでで最も高いエナンチオ選択性を達成できている。遷移金属触媒反応への適用についても配位子合成や適用すべき反応設計も進んでおり、おおむね順調といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度には、すでにまとめ段階に来ている不斉セレン触媒反応について、反応機構やエナンチオ選択性発現機構の解明などの詳細を詰めたのちに、2,3報の論文として発表する。また遷移金属触媒反応の不斉配位子としてのインダノール骨格の利用についても、配位子構造の最適化や適切な反応系の発見により、その優れた不斉環境構築能を証明する。
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