2020 Fiscal Year Annual Research Report
アルケンのビシナルジアミノ化における全立体化学合成
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19H02716
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
南方 聖司 大阪大学, 工学研究科, 教授 (90273599)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ジアミン / アンチ付加 / シン付加 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度は、アルケンのアンチジアミノ化反応の開発を重点的に検討し、達成することができた。この場合、入手容易な単純なノシルアミドを窒素源とし、酸化剤としても安価な次亜塩素酸ナトリウムの5水和物を用い、単体ヨウ素を触媒として実現することができた。これを受けて、令和2年度は、シンジアミノ化反応の開発を重点的に検討した。令和元年度のアンチ型の反応は窒素源が2分子から成り、アルケンとの反応は3成分の反応となり、アジリジンを経由することで、アンチ付加が実現された。シン型の反応を実現するためには、アジリジンを経ずに、一挙に2つの窒素ユニットがアルケン炭素に導入させる必要がある。そのためには、1つの分子内に2つの窒素ユニットを有する分子の設計が鍵となり、また、本ヨウ素触媒系で反応を進行させるためには、窒素上に求引基が必須となる。これらを加味して、スルファミドを母骨格として、両端の2つ窒素にさらに求引基としてtert-ブトキシカルボニル基を導入した窒素源を設計し、合成した。これを窒素源として、アンチ型反応と同様に次亜塩素酸ナトリウムの5水和物および単体ヨウ素を触媒としてアルケンのシンジアミノ化を検討した。目的の反応が進行することが判明したが、反応の効率が不十分であった。その原因を追求したところ、本系の窒素源が次亜塩素酸ナトリウムの5水和物によってクロラミン塩に変換する段階の反応溶媒とこの塩がアルケンと反応する段階の溶媒が同一のものではうまく進行しないことが判った、そこで、予めクロラミン塩を調製・単離し、この反応剤とアルケンとヨウ素触媒で反応させたところ、高い収率で目的物のジアミノ体を得ることができた。この反応条件を基盤とし、様々なアルケンに適用させ、完全にシンジアミノ化反応が進行することが確認でき、本反応の一般性を確立することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和元年度のアンチジアミノ化反応の条件を基盤とし、計画したシンジアミノ化のための窒素源がスムーズに合成でき、試行錯誤することなく、スルファミド骨格の窒素源が適切であったため、計画調書通りにシンジアミノ化を実現することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、アンチジアミノ化反応の不斉合成への展開を図る。光学活性なビシナルジアミンの合成は、医薬品や不斉合成の配位子として非常に重用される物質である。光学活性源としてハロアミド塩と容易に共有結合を形成する酸塩化物を選択する。キラルな酸塩化物としては、既に合成法が知られているビナフチルジカルボン酸ジクロリドを用いて検討する。計画調書で提案した触媒サイクルを基にして、反応条件等を精査する。また、対対称なシスアルケンのアンチ付加物は光学活性体となり、これらも利用価値の高い物質であることから(医薬品の重要な中間体や不斉合成の配位子)、その合成法を開発するべく、活性アジリジンの開環に基づくアンチダブル官能基化反応における不斉非対称化を検討する。この場合求核剤は反応系内で発生するハロアミド塩であり、光学活性な相間移動触媒を活用して不斉を誘起させる。相間移動触媒としては、第四級アンモニウム塩に容易に変換できるシンコナアルカロイド誘導体を主に検討する。
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