2021 Fiscal Year Annual Research Report
5~7族の金属錯体の個性を活かした触媒的な高難度変換反応の開発
Project/Area Number |
19H02719
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
村井 征史 名古屋大学, 理学研究科, 准教授 (40647070)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 前期遷移金属 / geminal-二金属反応剤 / エンイン / メタセシス |
Outline of Annual Research Achievements |
gem-二クロムアルカンと1,6-エンインの環化反応の様式が、ジアミン配位子の添加によりスイッチし、シクロヘキサン誘導体が得られることを見出した。この反応ではgem-二クロムアルカンをアルキリデン種等価体としてとらえることができ、アルキンとの形式的なメタセシス反応によりアルケニルカルベン等価体が発生し、続く分子内のオレフィン部位でのシクロプロパン化が起こることで進行したと考えると理解しやすい。本反応の特徴は、配位子が添加しない場合に得られたシクロペンタン縮環体はほとんど得られず、クロム中心に配位したジアミンの立体障害により、メタセシス反応の位置選択性をほぼ完全にスイッチできることである。選択性のスイッチングは、1,6-エンインの炭素-炭素二重結合を、極性を有する炭素-酸素二重結合に置き換えた基質でも見られ、その場合には6員環の形成を伴ったアルキリデン化が進行し、共役ジエンが得られた。これらの反応ではクロム塩が8当量必要であり、還元剤や配位子の効果を種々検討することでその低減を試みたが、残念ながら添加量を減らすことはできなかった。反応に適用できる基質の一般性を調査した後、以上の成果を論文としてまとめて報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究成果を拡張することで、gem-二クロムアルカンの新たな反応性の一面を明らかにでき、またその成果を論文として着実に発表できたことから、研究はおおむね順調に進行していると言える。また、昨年から取り組んでいるアルキンとの形式的なメタセシスを鍵とした新反応の開発に関しても、前駆体の骨格を工夫することで、新規変換反応を2つ発見した。これらの反応の収率を向上させて論文としてまとめること、そしてクロムに留まらず、他の5~7族金属元素を用いた新たな研究萌芽につながる反応性の知見を得ることが、本年の目標である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年がプロジェクトの研究期間の最終年度ということもあり、まずは昨年見出した二官能基化アルキンに対するアルキンカルベンメタセシスを経る変換反応を、論文として投稿できる形に仕上げることに集中する。こちらに重点を置きつつ、常に並行し、5~7族の様々な金属錯体を用いた新たな変換反応の開拓を行う。ここで特に重点を置くのは、これまでの1,n-アルキニルケトンや1,n-アルキニルエポキシドを用いた反応性の検討で、GC-Mass測定から環化付加体の生成が示唆されているタングステンである。着実に成果を積み上げる検討と、新たな研究萌芽の獲得につながる斬新な成果をつかむ検討をバランスよく推進したい。
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Research Products
(10 results)