2019 Fiscal Year Annual Research Report
非対称化型1,2-cis-立体選択的グリコシル化法の開発と有用糖質合成への応用
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19H02724
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
高橋 大介 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (00509929)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 非対称化 / グリコシル化反応 / 立体選択的 / 位置選択的 / ボロン酸 / 有用糖質 / メソジオール / 配糖体天然物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、様々な生物活性糖質の部分構造として見られるメソジオールに対して、水酸基の結合位置を予測・制御しながら、配糖化できる新規非対称化型1,2-cis-立体選択的グリコシル化反応の開発と有用生物活性糖質の全合成への応用を目的として研究を行った。申請者は、本研究の予備実験および初年度の研究で、具体的に以下の成果を得た。 【予備実験の成果】メソジオールとして、myo-イノシトール(Ins)保護体を選択し、1,2-アンヒドログルコースとのグリコシル化反応を、p-ニトロフェニルボロン酸触媒を用いて検討した。その結果、望む非対称化型1,2-cis-立体選択的グリコシル化反応が速やかに進行し、Glcα(1-6)Insが高収率かつ単一異性体として得られることを初めて見出した。 【2019年度の研究成果】まず、本非対称化型グリコシル化反応の反応機構解析を、DFT計算を用いて検討した。その結果、得られた遷移状態モデルが、当初想定していたボート型遷移状態と一致すること明らかにした。次に、種々の1,2-アンヒドロ糖(Gal, Fuc, Man及びRha)を糖供与体として用いて、DFT計算による結合位置選択性を予測した。その結果、Galα(1-6)Ins、Fucα(1-4)Ins、Manβ(1-4)Ins、及びRhaβ(1-6)Insが、それぞれ主生成物として選択的に生成するとの予測結果を得た。そこで、実際のグリコシル化反応を検討した結果、全ての場合において、予測されたグリコシドが高い位置及び立体選択性、かつ高収率で得られることを見出した。以上の結果より、本手法が、メソジオールに対して、水酸基の結合位置を予測・制御しながら配糖化できる非対称化型1,2-cis-立体選択的グリコシル化反応であることを明らかにし、計画通り、本年度の目的を達成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目的であった、メソジオールに対して、水酸基の結合位置を予測・制御しながら、配糖化できる新規非対称化型1,2-cis-立体選択的グリコシル化反応の開発に成功したため。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、メソジオールに対する非対称化型1,2-cis-立体選択的グリコシル化反応の有用性を拡張するための検討を行う。具体的には、分子構造の自由度が高い鎖状メソジオールを用いたグリコシル化反応を検討する。この際も、水酸基の結合位置を予測・制御しながら配糖化できるかについて実験及びDFT計算の両面から検証する。さらに、本反応を鍵反応とした抗生物質LL-BM782類及びアミノグリコシド系抗生物質を含む有用糖質の全合成への応用研究を行う。また、これまでの研究成果を取りまとめ、国内外の学会で成果発表を行う。また、学術誌への掲載を通して、積極的に社会・国民へ発信する。なお、今後の研究の障害となる問題点はない。
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Research Products
(23 results)