2019 Fiscal Year Annual Research Report
縮環部全炭素四級不斉中心の構築と異種生物活性多環式化合物の不斉全合成に関する研究
Project/Area Number |
19H02725
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
中田 雅久 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (50198131)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 全炭素四級不斉中心 / 多環式天然物 / 転位反応 / 不斉全合成 / 立体選択的 |
Outline of Annual Research Achievements |
1-(2-(2,2-ジメチル-6-メチレンシクロヘキシル)エチル)-2-ヨードベンゼン(1)の環化反応はトルエン中でPd(PPh3)4、CsCO3、HCO2Naを用いて行うと収率79%、trans/cis=20/1で進行した。(1)のメチレン部をエチリデンに変えた基質の環化反応は、いずれの反応条件でもtrans/cis=1/4~1/5とcis体を優先して与えた。 2-(2-ヨードフェネチル)-3,3-ジメチルシクロヘキサン-1-カルボアルデヒド(2)の環化反応は、Pd(PPh3)4、CsCO3を用いたときに収率61%、trans/cis=1.6/1で進行した。立体選択性向上を検討中である。 (2)のシリルエノールエーテルの環化反応はcis縮環体を優先して与え、トルエン中、Pd(PPh3)4、CsCO3を用いて行うと、ほぼcis縮環体のみが生成した。 (1)の反応をHCO2Naの代わりに他の求核試薬を用いる試みは、モデル基質を用いた検討によりスルフィドを得る新反応を見出した。 (4bS,8aS,10R)-4b,8,8-トリメチル-10-((E)-p-メトキシスチリル)-4b,5,6,7,8,8a,9,10-オクタヒドロフェナントレン-3,10-ジオール(3)をPb(OAc)4で処理するとフェノール部分の酸化的脱芳香族化に続く立体選択的1,2-転位が進行し、全炭素四級不斉中心をもつ生成物を収率83%で得た。PIDA,PIFAを用いた場合は低収率であった。(3)の10S体では基質の分解が優先した。フェノール部分の酸化的脱芳香族化に伴うアリル基の1,3-転位は転位体のクライゼン転位が連続して速やかにおこるため、その制御方法を検討中である。 不斉有機触媒を用いる不斉分子内マイケル反応が、ゼロフィルシンⅠ、コブシンの合成の新規キラルビルディングを高収率で高エナンチオ選択的に与えることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1-(2-(2,2-ジメチル-6-メチレンシクロヘキシル)エチル)-2-ヨードベンゼン(1)、2-(2-ヨードフェネチル)-3,3-ジメチルシクロヘキサン-1-カルボアルデヒド(2)と(1)のエチリデン体(1a)、(2)のエステル体(2a)、(2)と(2a)のシリルエノールエーテル体についてパラジウム触媒を用いた環化を検討した。これら以外にジメチル基がシクロヘキサン環の他の位置に結合した化合物、ジメチル基のない化合物の反応を行っており、立体選択性の違いを精査している。また、基質拡張の目的でジメチル基の代わりに各種ケタールをもつ基質についても検討している。これまでに(1)、(2)の反応においてtrans体の優先的生成を見出している。また、(1)の反応をHCO2Naの代わりにヘテロール、酸素原子供与体等の求核試薬を用いて行う試みは、モデル基質を用いた検討によりスルフィドを得る新反応開発に繋がった。 よって、以上の検討については順調に進んでいるといえる。 フェノール部分の酸化的脱芳香族化に続く1,2-転位、1,3-転位反応は (4bS,8aS,10R)-4b,8,8-トリメチル-10-((E)-p-メトキシスチリル)-4b,5,6,7,8,8a,9,10-オクタヒドロフェナントレン-3,10-ジオール(3) をモデル基質として合成し検討した。その結果、(3)のフェノール部分の酸化的脱芳香族化に続く1,2-転位に成功し、その10S体では転位がおこらないことを見出している。一方、アリル基の1,3-転位は進行するが、その後にクライゼン転位が連続するため、その制御法を検討中である。 不斉有機触媒を用いる不斉分子内マイケル反応がゼロフィルシンⅠ、コブシンの合成の新規キラルビルディングを高収率で高エナンチオ選択的に与えることを見出している。 よって、以上の検討については概ね順調に進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
1-(2-(2,2-ジメチル-6-メチレンシクロヘキシル)エチル)-2-ヨードベンゼン(1)と2-(2-ヨードフェネチル)-3,3-ジメチルシクロヘキサン-1-カルボアルデヒド(2)のパラジウムを用いた環化反応において、trans縮環生成物が優先して得られているので、(1)、(2)の反応を中心に収率、立体選択性の向上に向けた反応条件の最適化を行う。 本立体選択的反応の適用範囲拡大を目指し、基質のジメチル基がシクロヘキサン環の他の位置に結合した化合物、ジメチル基のない化合物の反応における立体選択性を検討する。また、ジメチル基の代わりに各種ケタールをもつ基質についても検討する。 末端に置換基をもたない二置換アルケンの結合したo-ハロゲン化アリールは、パラジウム触媒の作用により、全炭素四級不斉中心の構築を伴い、一級のσ-アルキル錯体を与えるが、このσ-アルキル錯体にトルエン中、Cs2CO3、(IPr)Pd(allyl)Clの存在下、各種チオールのTIPSエーテルを作用させると炭素―硫黄結合が生成することを見出している。そこで、この反応を(1)の反応に適用し、収率、trans/cis選択性を調査する。また、他の求核試薬も検討し、この反応によるヘテロ原子を備えた橋頭位のメチル基構築を検討する。 (1)の環化反応で得たラセミ体の生成物から合成を進め、各種立体選択的反応を経てゼロフィルシンⅠの全合成を目指す。また、その合成における合成中間体からコブシンの全合成も目指す。 一方で、光学活性な(1)、(2)の全合成を目指して、当研究室で開発した触媒的不斉野崎-檜山アリル化、新規光学活性C2 対称NHC-AuCl錯体を用いるシリルエノールエーテルのアルケニル化反応、不斉有機触媒を用いる不斉分子内マイケル反応により、ゼロフィルシンⅠ、コブシンの不斉全合成に活用できるキラルビルディングブロックを創製する。
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