2020 Fiscal Year Annual Research Report
縮環部全炭素四級不斉中心の構築と異種生物活性多環式化合物の不斉全合成に関する研究
Project/Area Number |
19H02725
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
中田 雅久 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (50198131)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 全炭素四級不斉中心 / 多環式天然物 / 転位反応 / 不斉全合成 / 立体選択的 |
Outline of Annual Research Achievements |
1-(2-(2,2-ジメチル-6-メチレンシクロヘキシル)エチル)-2-ヨードベンゼン①のパラジウム触媒による還元的環化は、トルエン中、100℃でPd(PPh3)4、CsCO3、HCO2Naを用いた場合の収率79%、trans/cis比10/1が最高の結果であった。 ①の環化反応をトルエン中、100℃でPd2(dba)3、P(t-Bu)3、K2CO3、KIを用いて行うと、4a-ヨードメチル-1,1-ジメチル-1,2,3,4,4a,9,10,10a-オクタヒドロフェナントレン②を収率50%、trans/cis比1:>100で得た。SPhosをリガンドとした反応では24時間後に②を収率52%、trans/cis比7:1で、72時間後に収率47%、trans/cis比>100:1で得たので、cis体が時間とともに分解したことが分かった。 ①の環化反応はトルエン/H2O中、100℃でPd(PPh3)4、Cs2CO3、B2pin2を用いた場合、2-(1,1-ジメチル-1,3,4,9,10,10a-ヘキサヒドロフェナントレン-4a(2H)-イル)メチル-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロランを収率91%、trans/cis比8.7:1で与えた。 ①の2,2-ジメチル基を除去した基質の上述の反応条件下における環化反応は、生成物を収率94%、trans/cis比1:1で与えた。この結果より、2,2-ジメチル基が反応のtrans選択性向上に重要であることが分かった。 ①の反応で生成するパラジウムσ-アルキル錯体の反応により、アリールスルフィドを備えた縮環部メチル基の構築に成功し、反応条件を最適化中である。 ①の誘導体の脱芳香族化藩王では、全炭素四級不斉中心の構築効率が低かったので、不斉有機触媒を用いる分子内マイケル反応の生成物からゼロフィルシンI、コブシンの骨格構築を検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1-(2-(2,2-ジメチル-6-メチレンシクロヘキシル)エチル)-2-ヨードベンゼン①のパラジウム触媒とギ酸ナトリウムによる還元的環化において、反応条件最適化の結果、環化体が収率79%で立体選択的(trans/cis=10/1)に生成するという前例のない結果を得た。 パラジウム触媒を用いた①の環化反応をギ酸ナトリウムに代えてヨウ化カリウムを用い検討したところ、ヨード基を備えた縮環部メチル基の導入に成功し、環化体が収率50%、trans/cis=1:>100で生成する反応条件を見出した。また、環化体を収率47%、trans/cis=>100:1で得る反応条件も見出し、生成物のtrans/cis比を自在に制御することに成功した。 パラジウム触媒を用いた①の環化反応において、中間体であるパラジウムσ-アルキル錯体がB2pin2と連続して反応し、トランス縮環体を立体選択的(8.7:1)に与えることを見出した。これはデカリン骨格縮環部にピナコールボリルメチル基を備えた全炭素四級不斉中心を構築した初めての例である。また、①の2,2-ジメチル基を除去した基質の環化反応も行い、2,2-ジメチル基が反応のtrans選択性向上に重要であることも見出している。 ①の反応で生成するパラジウムσ-アルキル錯体とトリアルキルシリルアリールスルフィドの反応により、アリールスルフィドを備えた縮環部メチル基の導入法を見出した。これはデカリン骨格縮環部にアリールチオメチル基を備えた全炭素四級不斉中心を構築した初めての例である。 上の生成物誘導体の脱芳香族化反応を検討したが、全炭素四級不斉中心の構築効率が低いことが分かったため、不斉有機触媒を用いる分子内マイケル反応の生成物からゼロフィルシンI、コブシンの骨格構築を検討する方針が固まった。 以上の新規研究成果が得られているので本研究は概ね順調に進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
1-(2-(2,2-ジメチル-6-メチレンシクロヘキシル)エチル)-2-ヨードベンゼン①のパラジウムを用いた各種環化反応において、trans縮環生成物が優先して得ている。一方、一酸化炭素、トリイソプロピル(フェニルチオ)シラン、パラジウムを用いたN-(2-ヨードフェニル)-N-メチルメタクリルアミドの環化反応を行い、S-フェニル 2-(1,3-ジメチル-2-オキソインドリン-3-イル)エタンチオエートを高収率(94%)で得ている。 そこで、同反応条件下に①の反応を行い、デカリン骨格縮環部にフェニルチオカルボニルメチル基を備えた全炭素四級不斉中心の構築に挑戦し、収率、立体選択性の調査、反応条件最適化を行う。 1-((1R,2R)-2-アミノ-1,2-ジフェニルエチル)-3-(4-ニトロフェニル)チオウレアを不斉有機触媒とする(E)-6,6-ジメチル-8-ニトロオクト-7-エナールの分子内マイケル反応により、(1R,2S)-3,3-ジメチル-2-ニトロメチルシクロヘキサン-1-カルボアルデヒド②とその(1S,2S)異性体③をそれぞれ収率61%、97% ee、20%、98% eeで得ている。 そこで、②と③のアルデヒドのα位にアリル基を導入する。このアリル化では隣接する置換基の立体配置により立体選択性が決まるため、②と③は混合物のまま使う。その後、アルデヒドはアセタールとして保護し、ニトロメチル基の変換によりアルデヒド④を得る。④を3-TBSオキシ-2-メトキシベンジルマグネシウムブロミドと反応させ、生じたヒドロキシ基を保護し、ベンゼン環の酸化的脱芳香族化、[4+2]付加環化によりコブシンの不斉全合成を目指す。また、④に2-オキソ-2H-ピラン-3-イルメチル亜鉛(II) ブロミドを反応させ、生じたヒドロキシ基を保護し、[4+2]付加環化によりゼロフィルシンⅠの不斉全合成を目指す。
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Remarks |
コロナ禍によりデータ収集が進まなかったため、研究成果公表が次年度に持ち越しになった。
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