2019 Fiscal Year Annual Research Report
Transition Metal Complexes Having Phosphinyl Radicals as Ligands: Functions Based on Orbital Interactions
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19H02730
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| Research Institution | Tohoku University |
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Principal Investigator |
石田 真太郎 東北大学, 理学研究科, 准教授 (90436080)
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| Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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| Keywords | リンラジカル / 遷移金属錯体 / 11族元素 / 常磁性錯体 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
今年度はリンラジカルが配位した9-11族錯体の中で、特にリンラジカル配位子一つを持つ単核11族錯体について取り組んだ。これらの錯体の理解は、より複雑な電子状態を持つ錯体の性質を理解する上で必要不可欠なためである。当初塩化金を用いて反応を行ったが、反応後に分解して複数のホスフィン金およびホスフィド金錯体を与えることが分かった。生成物の精査と構造解析、反応追跡を行った結果から、生成したリンラジカル配位の塩化金錯体が、塩素の転位により分解していることが推定された。
この転位反応の抑制は難しいため、配位子として塩素より転位能の低いペンタフルオロフェニル基を金属上に導入して合成を進めた。その結果、リンラジカル金(I)の合成および単離に成功した。エックス線結晶構造解析の結果から、この錯体は単量体である単核錯体であり、明確な分子間相互作用は観測されなかった。また、紫外可視吸収スペクトルやEPRスペクトルのような分光学的性質、ならびに理論計算からこれらの錯体の不対電子はほとんどリンに分布したAu(I)錯体であることを明らかにした。これは本研究課題のコンセプトを実証したという点のみならず、リンラジカル配位11族単核錯体の合成と帰属を完全に行った初めての例となる点で重要な結果である。
同様の手法で銀および銅錯体の合成を行ったところ、リンラジカル配位銀錯体の溶液中の観測には成功したが、分解が起こっていることが分かった。詳細を調べたところ銀単体の析出が認められたことから、銀の還元を伴う分解であることがわかった。銅錯体については引き続き検討を進めている。
また、リンラジカル配位の9族錯体の合成に向け、前駆体となるイリジウム錯体の合成を進めている。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
リンラジカルの配位した金の単核錯体の合成および単離に成功し、その構造と電子状態を明らかにできたことは研究の大きな進展である。得られた結果をもとに、現在銀および銅錯体についても研究を進めている。銅錯体の合成と単離はめどが立ったものの、銀錯体については分解など、取り扱いに難があり進捗が遅れている。
この研究と並行して、関連化合物としてリン上に三つ目の置換基を導入したかさ高いトリアルキルホスフィンの合成を行い、この酸化反応によるホスフィンラジカルカチオンの観測に成功した。以前関連する化合物をいくつか合成していたが、今回シリーズが完成し、かつ重要な進展があったため、これらを取りまとめ論文として報告することができた。
以上の状況を総合的に判断して、現在までの進捗状況はおおむね順調に進展していると結論した。
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| Strategy for Future Research Activity |
今後は今年度で見えてきた課題の解決を行う。具体的には、リンラジカル配位の銅錯体の合成および単離を進め性質の解明を行う。銀錯体については分光学的観測に成功しているものの、金属銀への分解が問題になっている。今回分解経路が明確になったため、得られた知見をもとに分解を抑える条件や配位子について検討を行うことで、銀錯体についても物性の解明を行う。それらを通じてシリーズとしての金、銀、銅錯体の性質を比較する。特に金属錯体の環境応答について詳しく調べ、取りまとめに入る予定である。
本年度の研究を通じて、リンラジカル配位のペンタフルオロフェニル金錯体が比較的安定であり、取り扱いやすいことが分かった。そのため、フルオロアリーレンをリンカーとした複核金錯体の合成にも挑戦する。リンラジカル配位子間の相互作用が明らかになると期待されるためである。
イリジウム錯体については原料合成が完了したので、上記の研究の遂行と並行して合成に挑戦する。
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Research Products
(1 results)
