2021 Fiscal Year Annual Research Report
Transition Metal Complexes Having Phosphinyl Radicals as Ligands: Functions Based on Orbital Interactions
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19H02730
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
石田 真太郎 東北大学, 理学研究科, 准教授 (90436080)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | リンラジカル / サーモクロミズム / 11族元素 / 常磁性錯体 |
Outline of Annual Research Achievements |
リンラジカルの配位したペンタフルオロフェニル銅錯体は単量体として存在し、結晶構造解析、EPRスペクトル、理論計算から 、これは銅(I)ホスフィニル錯体であることを突き止めた。この錯体は溶媒依存性のサーモクロミズムを示す。すなわち、溶液は常温で黄色であるが、3-メチルペンタン中極低温では青色を示し、2-メチルTHF中では赤色を示した。これらのサーモクロミズムの原因は、前者は二量体の形成、後者は溶媒分子の配位によることを、EPRや理論計算などから明らかにすることができた。3-メチルペンタン中、極低温ではこの錯体のEPRシグナルは消失する。このことは低温側で常磁性種から反磁性種に変化していることを意味している。一方で、2-メチルTHF中ではEPRシグナルは消失せず、銅とリンの異方性由来の複雑なシグナル形状を示した。そして想定される化合物の量子化学計算による最適化構造とそのTD-DFT計算による吸収スペクトルの予測を行い、それらと実際の吸収スペクトルとの比較から、極低温でサーモクロミズムの原因となる化学種を決定した。 一方で、純度をできるだけ高めた対応する金錯体ではサーモクロミズムは観測されなかった。したがって、この金錯体のサーモクロミズムは再現性に乏しく、従来観測されたサーモクロミズムは分解物、あるいは最初から混入していた不純物に由来するものであると判断した。対応する銀錯体については単離まではできているが、以上の状況からより純度を高める必要がありその検討を進めている。以上のように11族錯体については、中心金属に応じて性質が大きく異なることが明確になった。特に銅錯体のサーモクロミズムの原因を確定した事は、リンラジカル配位子を持つ錯体の特徴が明確になった点で重要な結果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はリンラジカル配位銅錯体のサーモクロミズムの原因を突き止めることができ、リンラジカル配位金属錯体の特徴を明確にした。それ以外の部分についても着実にデータの蓄積がなされている。以上を踏まえ、本年度の進捗はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きリンラジカル銀錯体の性質を丁寧に見ていく。また、これまで得られている服各錯体についても詳細を明らかにしていく。また、錯体の性質は、リンラジカル上の置換基、およびリンの酸化数に影響を受けるはずである。このことを調べるために、実際にリンラジカル上の置換基を変えた分子の合成法を確立するとともに、これらの新しいラジカルを使って遷移金属錯体の合成を行う。
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