2019 Fiscal Year Annual Research Report
Development of analytical methods of exhaled breath condensate analysis and their application to diagnosis of respiratory disease
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19H02751
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Research Institution | Aichi Institute of Technology |
Principal Investigator |
手嶋 紀雄 愛知工業大学, 工学部, 教授 (30292501)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川部 勤 名古屋大学, 医学系研究科(保健), 教授 (20378219)
村上 博哉 愛知工業大学, 工学部, 准教授 (40515128)
江坂 幸宏 岐阜薬科大学, 薬学部, 准教授 (70244530)
中嶋 秀 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 准教授 (10432858)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 呼気凝縮液 / 流れ分析 / キャピラリー電気泳動 / 呼吸器疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は(1)呼気凝縮液(EBC)中の水溶性化合物の捕捉・濃縮を指向した固相抽出用の吸着剤の開発(村上・江坂・手嶋),(2)EBC中の酸化ストレスマーカーであるグルタチオンの定量法及びEBC希釈度補正法の確立を見据えた無機・陰イオンの同時定量法の開発(手嶋・江坂・中嶋・村上),(3) EBC分析のモデルとしてのラットを用いた動物実験(川部・研究協力者の松島)を行った。 (1)固相抽出用の吸着分離剤の開発:EBC内に存在する種々の化合物の捕捉を可能にするために,特に親水性化合物に対して高い捕捉能を有する固相抽出用の吸着剤の開発を中心に研究を進めてきた。検討の結果,核酸塩基やヌクレオシドに対して高い捕捉特性を有する親水性相互作用クロマトグラフィー(HILIC)として利用可能な吸着剤を合成・評価した。 (2)グルタチオン及び無機・陰イオンの定量:キャピラリー電気泳動(CE)-非接触型電気伝導度検出(CE)-レーザー誘起蛍光検出(LIF)法を採用した。その結果,無機陽・陰イオンはC4Dによって検出された。一方,グルタチオンの蛍光誘導体はLIFによって検出された。本検討では検出系の強化も重要な課題である。そこでキャピラリーチューブからの微弱な蛍光を高感度に検出するために,励起光源としてUV-LEDを用い,試料の蛍光を凹面ミラーとシリンドリカルレンズを用いて集光した後,μPMTの光電面に高効率で導入する光学系を考案・試作した。 (3)EBC分析のモデル実験:呼気に含まれる不揮発性の物質をEBC中で検討するモデルとしてラットを用いた動物実験系を検討した。もともと生体内に存在しない薬剤を投与し,測定できることを予備的検討にて確認し,本研究のもとで,EBCサンプリングの標準化・濃縮法,ならびにEBCの希釈度補正法の検討に動物を用いた解析法の可能性を広げた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)固相抽出用の吸着分離剤の開発:EBC内に含有される親水性化合物は,呼気分析における標準化を進める上で重要な役割を担うものである。2019年度にこれら化合物の捕捉を可能にするHILIC型の固相抽出剤の開発を達成できたことから,EBCのサンプリング法を確立する足場が固められた。 (2)グルタチオン及び無機・陰イオンの定量:本CE-C4D-LIFシステムは,試料をアノードとカソードの双方から導入するこれまでに検討例が少ないユニークな手法である。本法により一回の泳動によって希釈補正物質候補である無機陽・陰イオンと酸化ストレスマーカーを同時に定量することが可能となった。一方,EBCのオンライン濃縮を指向して,CE-C4D法によるEBC含有の主要な金属イオン(5種),無機酸イオン(4種)の分離定量法を再検討した。すなわちこれらのイオンの分離及びμMオーダーでの検出を可能にする泳動液組成の最適化を行った。その結果,EBC中の様々な無機イオン,有機イオンを疾病・健康マーカーとして活用することを目的として,これらを必要感度で精度よく測定するための測定法の一つであるCE法の基盤をほぼ作ることができた。さらにキャピラリー内の試料量が超微量であるため,一般的な蛍光高度計の光学系では測定対象物質の検出が困難であった。そこで,上述の高効率な蛍光光学系を試作した。この検出器を用いることにより,EBC中に含まれる微量マーカーの計測が大いに進展すると期待される。 (3)EBC分析のモデル実験:EBC中の新奇マーカーの探索するために正常人や呼吸器疾患を持つ患者の気管支肺胞洗浄液中のプロテオミクスや肺組織のオミックス解析の結果に関する論文をもとに,EBC中で探索すべき新奇マーカーの候補について検討した。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)EBCサンプリングの標準化・濃縮法:2020年度にはEBCサンプリングユニットを開発する。まず研究協力者のPetr Kuban博士と連携し,市販の医療用シリンジ,ストローを用いる簡易型EBCサンプリングユニットを作成する。また,定量目的成分の捕捉・濃縮を考慮した2019年度の成果によるHILIC型固相抽出剤を用いてEBC中に含有される親水性化合物の前処理手法の開発を進める。これまでの検討により,各種のHILIC型固相抽出剤の捕捉特性が評価されており,目的成分毎に最適なHILIC型固相抽出剤の開発を行う。 (2)EBCの希釈度補正法と目的成分の高感度分析法:前述の無機イオンを,さらに高感度に分析するため,オンラインCE濃縮法を導入し,10倍以上の感度向上を目指す。一方で,より極低濃度なマーカー候補分子であるアクロレインさらには未知の候補有機イオンの検出を可能にするために,LIF検出法を併用する。アクロレインをモデル試料とした検討では,試作した検出器の感度や再現性の評価を行うとともに,EBC中に含まれる可能性のあるアルデヒド類の測定も検討する。 (3)EBC分析のモデル実験と新奇マーカーの探索:本研究のもとで確立されるEBCサンプリングの標準化・濃縮法,ならびにEBCの希釈度補正法を,小動物を用いた解析・確認系で検討するとともに,生命倫理委員会の承認のもと,ヒトでも確立したEBCサンプリングの標準化・濃縮法,ならびにEBCの希釈度補正法の応用を確認し,基盤が解析システムの構築後,EBC中の新奇マーカーの探索を行う。
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Research Products
(39 results)