2019 Fiscal Year Annual Research Report
気液界面修飾型薬物捕捉場の創成と持続可能な水系反応分離工学の構築
Project/Area Number |
19H02752
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Research Institution | Kitami Institute of Technology |
Principal Investigator |
齋藤 徹 北見工業大学, 工学部, 教授 (40186945)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
近藤 寛子 北見工業大学, 工学部, 助教 (60700028)
安田 啓司 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (80293645)
林 英男 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, 事業化支援本部技術開発支援部先端材料開発セクター, 上席研究員 (10385536)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | フローテーション / 気液界面 / 排水処理 / 塩基性薬物 / 塩基性色素 / 分子動力学 / ゼータ電位 |
Outline of Annual Research Achievements |
フローテーション分離において塩基性薬物や色素を選択的かつ高効率に捕捉する界面分離場を生成させ、水中薬物および色素の簡便・迅速な分離技術を設計した。 ①塩基性色素および薬物の迅速分離: 3つの汎用色素(ローダミンB、クリスタルバイオレット、マラカイトグリーン)について分離条件を検討した。微量のアルコール添加により、分離効率は著しく増大した。アルコールの効果はエタノール<2-プロパノール<1-ブタノールと炭素数の増加につれて増大した。アルコールが気液界面に配向し、色素のための選択捕捉場が形成されるとともに、気液界面積を増大させたためである。環境水および合成染色排水の簡便・迅速かつ低環境負荷な処理技術としての可能性を見出した。 疎水性(水-オクタノール分配係数)や酸塩基特性(pKa)の異なる薬物を系統的に捕集し、本法の適用範囲を調べた。薬物が中性化学種となるpH12において、疎水性と捕集率が相関した。薬物の捕集率は微量のアニオン界面活性剤の添加により著しく増大した。 ②気液界面分離場のキャラクタリゼーション: マイクロバブルの気液界面のデータ電位は負であり、pHの上昇につれて負電荷が増加した。塩基性色素や薬物の界面への捕捉に静電相互作用が関与することが強く示唆された。一方、疎水環境分子プローブを用いる気液界面の疎水性評価については蛍光スペクトルの再現性が低く、非平衡状態における物性測定の課題が見出された。 ③分子動力学シミュレーションに基づく気液界面における分子配向予測: 分子間相互作用に基づいて対象分子の挙動を予測する分子動力学シミュレーション手法により、気液界面に付近におけるローダミンBの挙動を追跡した。アルコール無添加時に比べ、1-ブタノール添加時にはローダミンBが気液界面に吸着する挙動が観察され、本系における分子動力学シミュレーションの有効性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
微量のアルコールを添加した無界面活性剤フローテーションにより、塩基性色素の著しく簡便かつ迅速な分離を達成した。環境水や染色排水中の共存物質の影響を低減する方法を確立し、排水処理への適用性が示された。さらに本法が色素選択的であったことから、色素合成時の新規精製技術としての可能性を見出すなど、応用においては、当初の予定以上の成果が得られた。 一方、蛍光分子プローブを用いる気液界面の疎水性評価については再現性が得られず、非平衡状態における蛍光スペクトル測定に課題が残った。そこで次年度の研究計画を一部前倒して分子動力学シミュレーションによる気液界面の色素分子の挙動を追跡した。アルコール共存下における塩基性色素の気液界面への吸着を再現できた。様々な条件下における塩基性薬物や色素および共存物質の気液界面への吸着を予測する手段となり、気液界面分離場を利用する分離や反応系を設計するための有力な手段となることが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
1.薬物・色素含有排水の迅速処理 最少量(0.1%以下)の添加により顕著な分離促進効果が得られた1-ブタノールを気液界面修飾剤として用いるフローテーションによる薬物や色素含有排水処理技術としての適用性を明らかにする。併行して、環境水や染色排水中の共存物質の色素除去に及ぼす影響を調べ、妨害を排除する方法を溶液化学や反応分離工学の観点から検討する。塩基性薬物については、薬物の疎水性(水-オクタノール分配係数log Kow)やpHと除去率の関係を調べ、薬物除去に及ぼす要因を明らかにする。 2.塩基性薬物・色素の迅速精製技術の開発 フローテーションによる迅速分離技術に基づく塩基性薬物や色素の高速分離精製技術を設計する。既存の方法で合成した色素や薬物の反応後 の溶液をフリーテーションセルに入れ、上記と同様に分離操作を行う。添加アルコールとして、エタノールと2-プロパノールを用いる。一定時間(3~5分)後に水面の濃縮層を採取する。この操作を繰り返し、原料、中間体、副生成物、目的生成物の割合をLC-MSにより追跡する。 3.塩基性薬物の低環境負荷水系合成の試み ミセル形成濃度以下の界面活性剤水溶液中に高密度に気泡を発生させ、気液界面における分子配向を利用することにより、ミセル触媒と同様の水系反応の可能性を探索する。高密度な気泡の発生には、せん断流によるマイクロバブル発生器、スタティックミキサー、ホモジナイザーを使用し、発生効率と安定性を比較する。反応系として、抗生物質や農薬の不活性化反応の他、塩基性薬物の合成反応を試みる。 4.気液界面における薬物・色素の配向や反応の分子動力学シミュレーション 実験系と平衡して、分子動力学シミュレーションソフトを用いる検討を行い、上記の反応や分離の最適化や新規な反応系の発見の可能性を探る。
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Research Products
(17 results)