2019 Fiscal Year Annual Research Report
Development of Fluorescent Sensors for Water and Their Functional Dye Material Characteristics
Project/Area Number |
19H02754
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
大山 陽介 広島大学, 工学研究科, 教授 (60403581)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 蛍光性センサー / 水 / 光誘起電子移動 / 分子内電荷移動 / 蛍光共鳴エネルギー移動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、蛍光性色素の光誘起電子移動(PET)、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)および分子内電荷移動(ICT)特性を利用して試料中や表面の水分を検出・定量化かつ可視化(蛍光発光による画像化)できる蛍光性水センサーを創製し、PET, FRETおよび ICT特性に基づいた水分検出のメカニズムを解明することで、微量水分から高水分領域で使用できる水分検出・定量・可視化蛍光分析法の創成を目的とする。本研究を遂行するために、1) 1波長励起・1波長発光特性のPET型およびPET-FRET型蛍光性水センサー開発する、2) 2波長励起・2波長発光および多色発光・多段階発光特性のICT型蛍光性水センサーを開発する、3) 開発した蛍光性水センサーをポリマー化、分散させたフィルムの作製、および基板への固定化を達成し、土木・農業・建築・医療・医薬・衛生分野に展開可能な機能性色素材料化を図る。本年度の研究成果として、PET特性とFRET特性を併せ持つPET-FRET型蛍光性水センサーDJ-1の合成および有機溶媒中での水分に対する光学センシング特性を調査した。DJ-1において、水分子の認識に伴いPET(アミノ基から光励起状態のアントラセンへの電子移動)が不活性化(抑制)された場合、エネルギードナー(ED)のアントラセン母体を光励起(EX1)すると、その励起エネルギー(蛍光発光エネルギー: Em1)がエネルギーアクセプター(EA)のBODIPYに移動(Em1を吸収)し、励起されたBODIPY母体が蛍光発光(Em2)するものと期待された。実験結果から、アントラセン母体で光励起した場合、水分量の増加に伴いBODIPY母体に由来する蛍光発光帯の強度が増大した。本研究結果から、DJ-1の水分検出メカニズムは、PETの効果的な抑制と高効率なFRETに起因していることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究成果において、水分検出に伴う蛍光増大型のPET-FRET型蛍光性色素が、微量水分を検出・定量・可視化できる蛍光分析法の確立に資する有望な水センサーであることを実証し(RSC Adv., 2019, 9, 15335-15340)、研究目的の1)を達成した。さらに、PET-FRET型蛍光性水センサーの水分検出限界の改善をさらに図るために、EDとEA間のスペーサーを修飾したPET-FRET型蛍光性水センサーDJ-2の開発と水分に対する光学センシング特性の評価を完了し、その研究成果を論文投稿している。一方、2020年度に予定していた研究目的2)の2波長励起・2波長発光および多色発光・多段階発光特性のICT型蛍光性水センサーを開発に関して、既にICT型蛍光性水センサーET-1の開発と水分に対する光学センシング特性の評価を完了し、その研究成果を国際学術雑誌において公表済(RSC Adv., 2019, 9, 31466-31473)みである。
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Strategy for Future Research Activity |
2波長励起・2波長発光(2Ex・2Em)型の水分検出用蛍光性センサーとして、電子供与性基(D)、および電子求引性(A)と水素結合形成能を併せ持つピリジル基を導入したD-A系あるいはD-π-A系のICT型蛍光性水センサーICT-1-3を合成する。ICT-1-3の溶液中の水分量増加に伴う光吸収・蛍光スペクトルにおいて、等吸収点や等発光点があるかどうかを調査し、センサーと水分子との反応メカニズムを解明する(等吸収点や等発光点が存在する場合は1反応(1平衡)、存在しない場合は2反応(2平衡)以上)。さらに、蛍光性水センサーのフィルム化および基板への固定化と水分検出による蛍光センシング特性を評価することを目的として、PET、PET-FRETおよびICT型蛍光性水センサーを分散させたポリマーフィルム(センサーとポリマー粒を溶媒に溶解⇒スピンコートにより基板上に成膜⇒乾燥後に基板からフィルムを剥離)やコーティング膜(センサーを分散させたポリマー溶液を基板に散布)を作製する。ポリマーの種類(極性、親水性、疎水性)が、センサーの分散性や水分検出に伴う蛍光発光特性に及ぼす影響について調査する。さらに、ビニル基を導入した蛍光性水センサーを直接重合させたフィルムも作製する。一方で、アルコキシシラン-Si(OR)3を導入した蛍光性水センサーを合成し、その加水分解・重縮合反応(ゾル-ゲル法)により、ガラス基板やITO(Indium Tin Oxide)基板上に蛍光性水センサーの架橋型ポリシルセスキオキサン薄膜を作製する。ポリマーフィルムや薄膜中のセンサー分子と水分子(液体・気体)との反応性(接触)について調べ(光吸収・蛍光スペクトル、熱分析(TG-DTA, DSC)、FT-IR測定)、蛍光性水センサー固定化材料の水分に対する蛍光センシング特性(蛍光強度と水分量の相関性)を調査する。
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