2019 Fiscal Year Annual Research Report
Environmentally-friendly versatile carbon-dioxide derived polymers to accelerate extrication from petroleum dependence and carbon dioxide recycling
Project/Area Number |
19H02757
|
Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
杉本 裕 東京理科大学, 工学部工業化学科, 教授 (20271330)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 二酸化炭素 / ポリカルボナート / 交互共重合 / エポキシド / 親水性高分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
二酸化炭素とエポキシドとの交互共重合により合成される脂肪族ポリカーボネート(以下,二酸化炭素ポリマー)は,脱石油・二酸化炭素資源化と環境負荷の低減を同時に満たす魅力ある樹脂材料であるが,性能の向上や用途の開発が遅れている。そこで二酸化炭素ポリマーの優位的かつ加速的な実用化のため,シンプルな構造的修飾のみで高性能化・多機能化することを目的として本研究に着手した。具体的には,生分解性・高吸水性樹脂を始め,固体電解質,生分解性接着剤,二酸化炭素固定用樹脂など,複数の側鎖ヒドロキシ基を導入するだけで多面的な用途展開を期待できる二酸化炭素ポリマーの創出をめざした。 2019年度は,文献既知のものとは異なる構造の水溶性・親水性二酸化炭素ポリマーを合成すべく,種々の含酸素側鎖官能基を有するポリマーをデザインし,それぞれの原料化合物となるエポキシド(重合反応の阻害を割けるため含酸素側鎖官能基を保護)の合成,効率よく二酸化炭素との共重合を進行させる金属錯体触媒の選定,および重合後の脱保護の条件検討を中心に実験を重ねた。そして,数種のエポキシドの合成を終え,共重合の成否を試すことができ,現在も検討を続けている。最も実験が進んだ構造のエポキシドからは,平均分子量が数千から1万程度の二酸化炭素ポリマーを合成することに成功し,さらに脱保護反応により導入した含酸素側鎖官能基の約70%において保護基を切断することができている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
水溶性・親水性二酸化炭素ポリマーを合成するために,2019年度は構造設計(構造選択)に重きを置いて実験による検討を進めた。 最初に計画していた構造の二酸化炭素ポリマーを得るための原料エポキシドによる実験検討では,共重合反応の最適条件の探索は順調に進んだものの,その後の脱保護反応(側鎖の酸加水分解反応)が想像していた以上に難しく,酸性条件を強めればポリマーの主鎖構造も壊れ,弱めれば脱保護がなかなか進まないという状況に陥った。そこで,その検討を続けながらも,(後に比較として着手することを計画していた)他の構造のエポキシドも並行して検討した。 いずれも側鎖に環状または非環状のアセタール構造をもつ7種類のエポキシドのうち,5種類のエポキシドの合成を年度内に終えた。続いて,5種類のうち比較的早期に合成が完了した4種類を二酸化炭素と共重合させる実験へ供した。このうち2種類のエポキシドはこれまでの他のエポキシドと同等の重合性を示し,重合度に差はあるものの相当する二酸化炭素ポリマーが得られた。合成した2種類のポリマーの脱保護反応(酸加水分解反応)では,成否が大きく分かれ,一方は主鎖構造も分解し,他方からは主鎖構造を大きく損なうことなく脱保護後のポリマーを得ることができた。 以上から,着手前の想定どおりにうまく行かなかった部分に対し,次年度の検討予定を早めて対応することにより,まずまずの結果を得ることができたため,おおむね順調と評価する。
|
Strategy for Future Research Activity |
2020年2月下旬から,まったく実験を行えなかったため,より一層,選択と集中を進め,アイデアを実現できるポリマー構造を見極めるための作業を急ぐ。 実験を再開できるようになり次第,2019年度に重合反応とその後の脱保護反応の両方に成功した構造の二酸化炭素ポリマーを最優先に,さらなる高分子量化と脱保護率の向上をめざす実験を実施する予定である。また,2019年度中に合成は終えたものの重合実験に至らなかったエポキシドについて,早い段階で重合と脱保護の検討を進める。 さらに,マンパワーと時間に余力が残っていれば,まだ検討していない新たなエポキシドついても,まずはそれらの合成から実験に着手し,短期間で効率よく研究を進める。
|
Research Products
(9 results)