2020 Fiscal Year Annual Research Report
Construction of chiral macromolecular structure through controlled chemical bond rotation by circularly polarized light irradiation
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19H02759
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
中野 環 北海道大学, 触媒科学研究所, 教授 (40227856)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宋 志毅 北海道大学, 触媒科学研究所, 准教授 (80600981)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 円偏光 / らせん / ねじれ / キラル増幅 / 円偏光二色性スペクトル |
Outline of Annual Research Achievements |
応募者らが直鎖状ポリフルオレン類に対して実現してきた円偏光によるらせん誘起を様々な化学構造を有する直鎖型高分子に適用する研究を進めている。これにより円偏光を用いるらせん構造誘起法の拡張と一般化を図ることを目的としている。これまでに、直鎖状高分子としてポリフルオレン誘導体に加えてポリナフタレン誘導体への不斉誘起を検討しており、円偏光により不斉構造が誘起されることを見出している。さらに、分岐型構造を有するポリフェニレン誘導体を種々の条件下で合成し、不斉構造誘起を試みている。加えて、これらに関連する低分子化合物についても円偏光による光学活性化を検討している。これらの高分子・分子を薄膜に加工して円偏光を照射してらせん構造あるいはねじれ構造を誘起し、これらを円偏光二色性(CD)スペクトル測定により確認する。これまでの検討から、円偏光によるキラル誘起に際しては強い分子間相互作用あるいは分子間配列が重要であることを見出しており、この知見に基づいて分子間相互作用が弱く誘起効率の低い系については、分子間相互作用増強のための「補助分子」を用いて効率を向上させる。これは、アモルファス状試料中の分子鎖間あるいは分子間に入りこんで結晶化するアキラル低分子を混合して薄膜化させて膜系全体の秩序を向上させ、円偏光法を有効にする手法である。また、ポリナフタレン類は溶液中でもある程度安定なねじれ構造を有する可能性があり、不斉誘起実験条件を固体薄膜に限らず溶液、懸濁液へと拡張する検討を行っている。 円偏光により誘起される分子鎖のキラル構造はCDスペクトル測定により検討するが、キラル構造同定を目的としてCDスペクトルの理論計算を行い実験スペクトルとの比較を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
円偏光を用いた高分子への不斉誘起の研究対象を直鎖高分子から分岐高分子へと拡張する目的で、ベンゼン環が互いに規則正しく結合し一定間隔で分岐した構造を有する物質(不溶性の有機構造体および可溶性のハイパーブランチ高分子)を合成し光学活性化について検討している。不溶性の有機構造体については光による光学活性化の効率が著しく異なり、分岐構造の密度の高いものについては不斉誘起は困難であるが、適切な分岐構造の密度を選ぶことにより高効率な不斉誘起が可能であること見出した。さらに、有機構造体の固体核磁気共鳴スペクトル研究による内部回転の速さを見積もり、回転運動のタイムスケールが10 msec程度の試料では不斉誘起が容易であり、100 msec程度の試料では難しいことを明らかにした。これにより、固体中での分子運動の速度と不斉誘起効率の関係について初めて明確な指針を得ることができた。加えて、可溶性のハイパーブランチ高分子については、概ね分岐構造の密度によらず効率よく不斉誘起を実現できた。不溶性の有機構造体と可溶性のハイパーブランチ高分子は同じ化学構造を有する物質だが前者は架橋構造を有し、後者は有しない点のみ異なる。架橋構造により構造内が極めて剛直となり内部回転が強く規制されることが、両試料についての対照的な不斉誘起効率の一因ではないかと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
効率の高い不斉誘起を実現したベンゼン単位からなる有機構造体について、まず、光学活性化した有機構造体の熱刺激、光刺激および溶剤添加に対するキラリティーの安定性を調べる。さらにキラル機能材料として開発するため次の検討を行う。不斉識別機能発現を狙って、バッチ法により医薬品原料などのラセミ体化合物との不斉相互作用を検討する。また、触媒材料として利用するため、構造単位として窒素あるいはリン原子を導入したうえでパラジウムなどの触媒活性金属との錯体としたうえで光学活性を行い、触媒活性を調べる。さらに、円偏光発光材料としての機能発現のため、ベンゼン環に変えてフ発光性のフルオレン残基を導入した有機構造体を合成し、光学活性化を図る。加えて、ハイパーブランチ高分子についても同様の検討を行う。また、昨年度の研究から分岐構造が興味深い不斉誘起特性実現するための一要因であることが明らかなったことから、直鎖高分子の側鎖にオリゴフェニレン鎖を導入し主鎖中に分岐点に代る接合部を有する新規高分子を合成し不斉誘起を検討する。それら新規分岐構造含有直鎖高分子についてもキラル構造の安定性と機能の発現に関する検討を行う。
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Research Products
(19 results)