2020 Fiscal Year Annual Research Report
化学反応性の根源に迫りラジカル重合の基礎研究に資する新規電界ESR測定法の開発
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19H02765
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Research Institution | Nara University of Education |
Principal Investigator |
梶原 篤 奈良教育大学, 理科教育講座, 教授 (50224415)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ラジカル重合 / ESR/EPR / 電解ESR / 酸化還元電位 / ラジカル反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は新しい電解ESRセルの開発に向けてもともとあったESR装置を改良し、感度の向上に向けた改造を施すとともに、新規電解セルの設計を行った。電極の位置によるスペクトル感度の差などの点検も行った。2020年度も前年度の結果を踏まえて、感度向上のための工夫を重ねた。 2020年度は、既知の電解ESRの測定ができるかどうかを確かめながら、徐々に不安定なラジカル種の測定と電解条件下の測定を行っていった。研究対象としてはまず安定ラジカルであるTEMPO(TEtraMethyl PiperidinOxy)を用い、電位を掃引しながらESRスペクトルを観測して、スペクトルの出現消滅と電位との関係を調べる。その次の段階として、開始剤から発生させたラジカルについて調べる。ラジカル開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)や2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(TMDPO)を用い、光照射下でラジカルを発生させてTEMPOと同様に電位とスペクトルとの関係を調べる。TEMPOおよび、TMDPOからのラジカルでは、電解ESRの測定によって、酸化還元電位を見積ることができた。現在は、実際の成長ラジカルのスペクトルを用いて電位とスペクトルの関係を調べている。これは、スペクトルは観測できるものの、酸化還元電位との関連が明確に表れない。うまく測定できた系に比べて、ラジカル濃度が100分の1から千分の1程度と低いことが主な原因と考えているが、ラジカルの寿命そのものも非常に短くなっているので、こちらに原因があるのかもしれない。 研究としてはおおむね当初の予定通り進行していると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は2019年度に行った新しい電解ESRセルの開発のための電解セルの種々の改造をもとに、さらなる感度の向上に向けた改造を施すとともに、新規電解セルの設計を行った。大きな問題点は、観測しているラジカルの濃度が低いことによる感度の低下で、それを克服するべく、低温測定による感度向上の可能性についても検討した。電極の位置によるスペクトル感度の差などの点検も行った。これらの結果は次の段階へ進むために重要で、貴重なデータが得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は前年度に引き続き、新規電解ESRセルを開発し、それを用いて電解ESR測定を行う。最も重要な目標である、ラジカル重合中に生成する成長ラジカルの酸化還元電位の測定に取り組む。現在、スペクトルが観測しやすいメタクリル酸エステル類で研究を行っているが、うまくいっていないため、ほかのモノマー、例えば、ビニルエステル類やジエン類などについても検討する。リチウムイオンバッテリーの電極反応といわれている電解反応の測定も行い、ラジカル重合反応だけでなく、電池の電解反応についても検討する。
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