2020 Fiscal Year Annual Research Report
Control of structures and properties of multi-helical polysaccharides by using rewinding of the helices
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19H02773
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
松田 靖弘 静岡大学, 工学部, 准教授 (40432851)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉場 一真 群馬大学, 大学院理工学府, 助教 (40375564)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 多重らせん多糖類 / 再性 / 増粘剤 / キサンタン |
Outline of Annual Research Achievements |
塩酸中でのキサンタンの熱変性・再性挙動を詳細に調べた。固有粘度が中性よりも小さくなる点と、一部にらせんの欠陥部位が存在する可能性があることを除き、概ね中性で得られたモデルに基づいて、熱変性・再性に伴う構造変化を説明できた。成果をまとめて、学術雑誌に投稿する準備中である。 キサンタンとクエン酸の濃度が高い状態でキサンタンの熱変性・再性挙動を調べた。モル質量が顕著に増加して、キサンタン鎖同士に架橋構造が形成されていることが分かった。赤外分光スペクトルはクエン酸が架橋に関与していることを強く示唆した。2021年度において、追加実験を行い、学会や学術雑誌で発表したい。 水酸化ナトリウム水溶液中でキサンタンの熱変性・再性挙動を調べた。再性によってモル質量や円偏光二色性スペクトルが大きく変化しないにも関わらず、固有粘度が顕著に減少したために、らせん欠陥による折れ曲がり構造が示唆された。 尿素水溶液中でキサンタンの熱変性・再性挙動を調べた。固有粘度が顕著に大きくなったのに対して、本助成金で購入したサイズ排除クロマトグラフィー・オンライン多角度光散乱測定では大きな変化が見られず、尿素水溶液中においてキサンタンの一部が巨大な会合体を形成して、カラムに吸着していることが示唆された。 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、当初予定していた学会発表は諦めざるを得なかったが、2020年度後半にはオンラインで、高分子学会、日本レオロジー学会が主催する全国規模の大会で成果を発表した。 キサンタン水溶液と塩化アルミニウム水溶液との液-液接触によるゲル成長はアルミニウムイオンの拡散過程が律速段階となって起きることを示した。形成されるキタンタンゲルには光学的異方性が観測され、キサンタン二重らせんがゲル中で配向している。キサンタンゲル形成の途中でゲル成長が停滞し、二つのゲル成長過程が存在することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
キサンタンの変性・再性に及ぼすpHの影響を調べるために塩酸を用いてpHを2に調整した場合のキサンタンの構造、粘性の変化に関しては、幅広い分子量、キサンタン濃度において測定済である。全体的に固有粘度が低下した以外は、中性で見られた挙動から大きな変化はなかった。実験データが揃ったので、成果をまとめて、学術雑誌に投稿する準備中である。 キサンタン間に架橋構造を形成すると報告されている、クエン酸を用いてpHを2まで低下させた場合、静的光散乱測定から得られるモル質量が顕著に増加していた。赤外吸収スペクトルはクエン酸の存在を示しており、クエン酸が架橋構想を作っていることを示唆している。クエン酸濃度を調整して、円偏光二色性スペクトルが測定できる条件を探索して、架橋構造に関する実験データを追加した上で論文にまとめたい。 新型コロナウイルスの感染状況が厳しく、2020年度は学会発表する機会に大きく制約を受けた。当初計画していた程発表できなかったが、年度後半はオンライン学会である程度発表できた。 水酸化ナトリウム水溶液中、尿素水溶液中の構造変化に関しても、特徴的な変化が測定できた。2020年度に始めたばかりで、未だに学会発表できていないが、2021年度中には発表できる程度に進捗している。 液-液接触法によるキサンタンの一次元ゲル成長に対して、アルミニウム濃度、キサンタン濃度の依存性について界面移動描像の理論にて解析を行った。ゲル成長が停滞するゲル幅はセル長でスケール化できることを示した。このことはキサンタン溶液のゲル成長の停滞がゲル化の阻害因子の濃度変化に依存して起こることを示唆している。現在のところ、キサンタン溶液に指示薬を加え、pH変化に注目して調査を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
塩酸でpHを2に調整した水溶液中でキサンタンの変性・再性した場合の構造解析に関しては、十分な結果が得られている。なるべく早く論文にまとめて学術雑誌に投稿したい。 クエン酸でpHを2に調整した水溶液中でのキサンタンの変性・再性した場合の構造解析に関しては、モル質量の増加と言う特徴的な挙動は調べられている。架橋構造の詳細に関する実験データがやや足りないが、それを補えば単にpHの違いだけではなく、添加する有機酸の構造によって、キサンタンの構造・物性も変化する好例となる。2021年度に追加の実験を行った上で、論文にまとめて学術雑誌に投稿したい。 水酸化ナトリウム水溶液中および尿酸水溶液中においては特徴的な挙動が見られているが、再現性を確認すると共に、さらに幅広い水酸化ナトリウム、尿素濃度における構造変化を調べる。水酸化ナトリウム水溶液中においては、基本的にはこれまでと同様に静的光散乱測定、固有粘度測定を行い、再現性を確認する。一方で、尿素水溶液中においては、キサンタンの会合数や分岐構造が複雑であり、サイズ排除クロマトグラフィー・オンライン多角度光散乱測定を用いて、各成分に分離して構造解析を試みたい。 2021年度は食品や化粧品の劣化にも関連すると考えられる、長時間水溶液中において分解していく過程におけるキサンタンの構造変化にも注目し、構造解析を試みる。キサンタンが分解される条件および分解されたキサンタンを精度良く測定する手法の開発を今後検討していく。 キタンサンの変性・再性後の溶液中の分子形態、およびキサンタンのゲル化では、100万程度の分子量が閾値となって変化することが示唆されている。これらの研究に使用可能な試料の分子量制御について検討する。
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Research Products
(25 results)