2020 Fiscal Year Annual Research Report
Hierarchical Heterogeneity and Stress Distribution in Polymer Network Systems by Spatio-Temporal Mapping Analysis
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19H02780
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
春藤 淳臣 九州大学, 工学研究院, 准教授 (40585915)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ナノレオロジー / デフォーカスイメージング / 不均一性 / ネットワーク / 応力集中 / 力学物性 / ガラス |
Outline of Annual Research Achievements |
高分子ネットワークの形成・固化過程において発現した不均一性は緩和させることができない。そのため、系中の不均一な反応・固化過程が架橋点あるいはそのクラスターの空間的なばらつき、ひいては材料を変形させた際の不均一な応力分布に繋がるとの考えられる。このような応力分布は応力集中を誘起しうるため、材料のタフネス性 (靭性) や寿命と深く関連していると考えられるが、その理解には程遠いのが現状である。本研究では、(1) 高分子ネットワークの形成・固化過程における不均一性と応力分布の関係、および (2) 応力分布とタフネス性・寿命との関係を正確に理解し、力学物性が精密に制御された材料の設計原理・指針を創出することを目的とした。令和2年度に実施した具体的な項目と主な研究成果を以下にまとめる。
(1) 令和元年度にセットアップした装置を用いて、高分子液体の局所物性を評価した。その結果、高分子液体中には、ナノスケールにおける密度揺らぎが存在し、観測時間が系の緩和時間よりも短い場合、密度揺らぎの凍結に起因する不均一性が発現することを明らかにした。また、高分子鎖を化学架橋した場合、長時間スケールにおいても不均一性が維持されることも確認した。 (2) 高分子水溶液をその曇点近傍で静置すると、系の緩和時間が十分長くなり、ゲル化(固化)することを見出した。このゲル化過程について検討した結果、ゲル化は物性の不均一化を伴って進行すること、および不均一性の長さスケールは50 nm程度以下であることを明らかにした。 (3) 付加反応によって得られた高分子ネットワークの不均一性は、その反応条件によって制御できることを見出した。また、不均一性の程度が異なる試料の破壊挙動は、ガラス転移近傍における動的不均一性および応力集中に関係していることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的・実施項目として、初年度に (1) 測定装置の改良とその検証、(2) 局所領域における物性解析、また、次年度以降に、(3) 変形あるいは緩和過程における不均一性の評価、(4) 応力分布の可視化、(5) タフネス性と破壊挙動の相関解析を設定した。
令和元年度は、当初の計画に従って、実施項目(1) ならびに (2) を実施した。令和2年度は、実施項目(2), (3) および (5) の一部を実施した。具体的には、ネットワークの形成過程における不均一性を検討し、密度揺らぎの凍結と不均一性との関係を明らかにした。また、不均一性の制御にも注力し、応力集中や破壊挙動との関係を検討した。伸長ひずみを印加した状態での高分子ネットワークの不均一性の解析(実施項目(3) に対応)ついては一部着手しており、応力分布に関する知見(実施項目(4) に対応)も得られつつある。
令和2年度の学会発表は、コロナ感染症のため、国内のもの数件に限られているが、学術論文は4報、さらに2報投稿準備中である。以上の理由により、おおむね順調に研究が進展したと判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでセットアップした装置を用いて、高分子ネットワーク系の変形過程における不均一性の評価を行う。具体的には、伸長あるいはせん断ひずみを印加した状態でプローブの熱運動とその場所依存性を解析し、変形過程が不均一性の程度や特性長さに与える影響を明らかにする。その際、一般化Stokes-Einstein式に基づく貯蔵弾性率、損失弾性率および緩和時間の算出についても検討する。また、蛍光発光や光弾性法、プローブ粒子の座標解析等を用いて、変形状態における応力分布を可視化する。さらに、引張剥離試験等を用いて、タフネス性や破壊挙動を評価し、不均一性や応力分布との関係を明らかにし、統一的な解釈を試みる予定である。
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