2020 Fiscal Year Annual Research Report
スピン依存の光励起ダイナミクスを利用した開殻分子エレクトロニクス
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19H02788
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松田 建児 京都大学, 工学研究科, 教授 (80262145)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 分子エレクトロニクス / 開殻分子 / 励起状態 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、ジアリールエテン縮環体の2量体に関する研究を行った。合成した縮環体2量体は、単量体に比べて顕著な長波長化を示した。HPLCで分取すると、R,R体とR,S体の2種類のジアステレオマーに由来すると考えられる、長波長側に吸収を持つ化合物と短波長側に吸収を持つ化合物に分離可能であった。TD-DFT計算によるとR,R体の方が長波長に吸収を持つことが分かり、吸収波長の違いは分子軌道の重なり方の違いで説明できた。交換相互作用についても、R,R体のほうが強いことが分子軌道計算によって示唆された。 また、安定有機ラジカルであるイミノニトロキシドを、4-(4-ビフェニル)ピリジンに結合させた分子を合成し、ラジカルの有無が分子コンダクタンスに与える影響について調べた。分子コンダクタンスの評価には、固液界面STMの手法を用いた。合成したラジカルをもつワイヤ分子を長鎖アルキル基を持つロジウムポルフィリンテンプレートに配位させて錯体を合成した。また、参照分子として、ビフェニルのねじれ角が同程度になるように、イミノニトロキシドの代わりにメチル基を導入した分子を別途合成し、異なる鎖長のアルキル基を持つロジウムポルフィリンに錯形成させた。固液界面STMにおいて、2次元相分離した分子配列が観測されるように、2種類の錯体の溶液の濃度条件を最適化した。得られた分子配列に対して、STMの見かけ高さをヒストグラムを作製し評価を行った。その結果、ラジカル置換基を持つ分子ワイヤでは持たない分子ワイヤに比べて3倍程度分子コンダクタンスが大きくなることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、ジアリールエテン縮環体の2量体が顕著な長波長化を示すことを見出し、R,R体とR,S体の2種類のジアステレオマーでの吸収波長の違いについて考察した。また、ラジカルの有無が分子コンダクタンスに与える影響について調べ、ラジカル置換基を持つ分子ワイヤでは持たない分子ワイヤに比べて分子コンダクタンスが大きくなることが分かった。おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、オリゴマーのジアステレオ異性と吸収波長の関係についてさらに検討すると共に、交換相互作用との関係についても検討し、縮環体オリゴマーの優れた電子輸送特性を明らかにしていく予定である。また、ラジカル置換基が分子コンダクタンスに与える影響については、ワイヤ上のスピン密度との関係について検討する予定である。
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Research Products
(6 results)