2019 Fiscal Year Annual Research Report
三重項励起準位制御に立脚した複合分子システムの構築と次世代有機デバイスの実現
Project/Area Number |
19H02790
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
儘田 正史 九州大学, 工学研究院, 助教 (60625854)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 有機EL / 有機半導体 / 熱活性化遅延蛍光 / エレクトロルミネッセンス / 三重項励起子 |
Outline of Annual Research Achievements |
高効率な有機ELを実現可能な技術として熱活性化遅延蛍光(TADF)が注目されているが、青色素子など高励起準位を有する系の創出や実用に耐える素子の開発および将来のセンサ光源としての近赤外領域での開発などに対しては多くの課題が残る。本研究では、TADFなどの三重項励起子が関与する過程の学理の探究を進め、次世代の有機ELを与える分子システムを構築し、有機デバイスの産業化へ貢献することを目的とした。本研究では、ホスト材料、TADF材料、発光材料それぞれの開発を進めるが、初年度である本年は、幅広い分子構造からそれぞれの材料探索を行うとともに、高速分光測定による励起子過程の解析を進めた。 ホスト材料については、特に高三重項励起準位を持つ安定な材料がないという問題がある。そこで、高い安定性を実現するため不安定官能基を用いないことに重点を置いて材料設計を進めた。π共役系を制御することで、有機半導体としてはこれまでで最も高い3.2 eVを超える三重項励起準位をニート薄膜において実現した。成膜性やプロセス性も兼ね備えており、純青色TADF材料のホストとして期待できる。発光材料開発においては、ドープ膜で100%の量子収率を示す安定な蛍光材料の創出に成功し、高い分子配向性を示すことも明らかとした(ACS Mater. Lett. 2020, 2, 161)。また、>800 nmで10%の高い量子収率を示す近赤外発光材料なども見出している。TADF材料については三重項励起子の逆項間交差過程のメカニズムの解明などを進め、高位三重項状態の関与を示唆する結果を得ることに成功した(J. Phys. Chem. Lett. 2020, in press)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目標である、高効率デバイスのための分子システムを構築するために、高性能な各種材料開発が鍵であるが、本年度の検討においてすでに有望な材料を見出し、その評価を進めるに至っている。安定な純青色ホスト材料は実績として外部に発表するところまでは到達しなかったが、計画通りに合成を完了し、また分子設計通りの物性を示していることから、今後のデバイス評価をあわせて成果発表を行う。一方で、発光材料開発や三重項励起子の逆項間交差過程のメカニズムなどについては成果発表を行っており、有機デバイス中の励起子の学理のさらなる深化が期待できる状況にある。以上の研究進捗状況より、本年度までの研究進捗状況は順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までに開発した材料のデバイスの基礎評価を完了させる。新規青色ホストは、純青色TADF材料を用いたデバイスを作製し三重項励起子の閉じ込めの実証を行い、電荷移動度およびデバイス耐久性の評価などにより、ホストとしての性能を明らかとする。また、高い量子収率を示す近赤外発光材料についても、TADF材料をアシストドーパントとして用いた有機ELを作製し、高性能近赤外有機ELを実現する。さらに、これらの材料を基盤とした多様な材料システムへと展開する。一方で、引き続き新たな材料群の開発にも取り組み、得られた知見を分子設計にフィードバックすることで効率的な材料開発を推進する。
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Research Products
(6 results)