2021 Fiscal Year Annual Research Report
Development of innovative light-emitting-materials by construction of optically active higher-ordered structures and control of morphologies
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19H02792
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
森崎 泰弘 関西学院大学, 生命環境学部, 教授 (60332730)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 円偏光発光 / 面性不斉 / 高次構造制御 / 形態制御 / シクロファン |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はこれまでに、五種類の[2.2]パラシクロファン化合物の光学分割法を開発し、様々な光学活性パイ電子系を構築してきた。本年度はこれらをビルディングブロックとして用い、以下の項目に焦点を合わせて研究を展開した。 ①光学活性X字型・V字型分子の系統的合成に関して、メトキシ基を2つ有する光学活性V字型分子を四種類合成し、その物性評価とシミュレーションによる物性解明に成功した。四種類の分子とは、メトキシ基を有するベンゼン環でパイ電子系が60度と120度の角度で積層したV(60)ならびにV(120)字型分子と、メトキシ基を持たないベンゼン環でパイ電子系が60度と120度の角度で積層したV(60)ならびにV(120)字型分子である。いずれの分子も積層した二つのパイ電子系が光を吸収し、励起状態においては一つの積層パイ電子系に軌道が局在化して発光することが分かった。シミュレーションの結果から、ベンゼン環を有するベンゼン環でパイ電子系を積層させると、励起状態においてパイ電子系同士の相互作用が弱く、分子軌道が片方の軌道に完全に局在化するのに対し、メトキシ基を持たないベンゼン環で積層させた場合は、励起状態において大部分は片側のパイ電子系に軌道が局在化しながらも、対面のパイ電子系にも軌道が非局在化することがわかった。これにより、磁気遷移双極子モーメントの増大が見られ、優れた円二色性や円偏光発光特性を示すことが明らかになった。 ②縮環芳香環が積層した光学活性分子の合成に成功した。フェナントレン環を積層させたところフェナントレン環にらせん性不斉が誘起され、すぐれた円偏光発光特性を示すことが分かった。 ③パイ電子系が折りたたまれた光学活性フォルダマーの合成に成功した。面性不斉によってフォルダマーにらせん性不斉が誘起され、異方性因子が10のマイナス二乗レベルに達する極めて優れた円偏光発光特性を発現した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
光学活性X字型・V字型分子の系統的合成に関しては上述の他にも異種パイ電子系を角度ならびに積層位置を変えて積層させた光学活性分子の合成にも成功し、その円偏光発光特性と配向性との関係を実験的かつ理論的にあきらかにすることができた。 面性不斉分子を用いて他のキラリティを制御した光学活性分子の合成にも成功した。フェナントレン環やベンゾ[c]フェナントレン環を積層させることで、積層縮環芳香環のみならず分子全体にらせん性不斉を誘起することができた。さらには、ポリパラアリーレンエチニレン共役系の末端ベンゼン環をシクロファン骨格により積層させることで、共役系にらせん性不斉を誘起することにも成功した。この分子の円偏光発光異方性因子は10のマイナス二乗レベルに達し、当研究室における円偏光発光性分子の中で最も優れた物性値であった。
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Strategy for Future Research Activity |
光学活性X字型・V字型分子の系統的合成において、予定していた分子の残り4種を合成する。無置換ベンゼン環を両末端にもつパイ電子系を60度と120度で積層させた分子と、メトキシ基を2つ有する光学活性X字型分子(メトキシ基を60度と120度に配向させた分子)である。さらに、ベンゼン環を5つ有するパイ電子系が、末端のベンゼン環・二つ目のベンゼン環・中央のベンゼン環で積層させた分子の合成とキロプティカル特性評価を試みる。 予備的な実験により、アントラセン環を有するパイ電子系を積層させると、三重項-三重項消滅によるアップコンバージョンが起こり、長波長の光励起により短波長で円偏光発光することが分かった。アントラセン環の配向性とアップコンバージョン効率ならびに円偏光発光特性に関して詳細に検討する。
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