2019 Fiscal Year Annual Research Report
光活性中心が高濃度凝集した高効率発光性シリカガラスの開発
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19H02802
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
梶原 浩一 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 准教授 (90293927)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | シリカガラス / 光活性中心凝集体 / 希土類イオン / エネルギー移動 / ナノ結晶 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、濃度消光のない光活性中心の高濃度ナノ凝集体を含む透明発光性シリカガラスの開発と物性評価、および発光デバイスへの応用である。今年度は主に、紫外光を内部量子効率~1で発光するシリカ-(Gd,Pr)PO4透明結晶化ガラスを用いた狭帯域UVB光源の原理実証と、赤外発光材料として有望なシリカ-YbPO4透明結晶化ガラスの合成条件の確立に関する研究に取り組んだ。
筆者らは、乾癬や白斑などの皮膚疾患治療に有用な波長313nmの狭帯域UVB光を内部量子効率~1で高効率に発光するシリカ-(Gd,Pr)PO4透明結晶化ガラスを開発していたが、適切な励起光源を用いて光源化するための構成は未検討であった。当該ガラスを用いた狭帯域UVB光源を実現するため、実用光源であるエキシマランプを励起光源とすることとした。Pr3+イオンの4f-5d遷移による紫外光吸収帯を励起できる発光波長222nmのKrClエキシマランプ光を用い、Gd3+イオンへのエネルギー移動を介することで、Gd3+イオンから内部量子効率~1の高効率発光が行えることを示した。
シリカ-YbPO4透明結晶化ガラスは、SiOH基濃度を低減すれば波長1μmで高効率発光する赤外発光材料となる。しかし、合成の再現性が悪く、特に透明性の良い試料が得られにくいことが課題であった。当該年度はその合成条件の改良に取り組み、Yb3+イオンに対する配位力の強い配位子を含む錯体をYb源とすることで合成中のYb3+イオンの凝集が抑えられ、透明性が向上することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
狭帯域UVB光を量子効率~1で高効率に発光するシリカ-(Gd,Pr)PO4透明結晶化ガラスの励起光源として、実用光源であるエキシマランプが使用できること、発光波長222nmのKrClエキシマランプを用いても内部量子効率~1で発光することを示した。これにより、シリカ-(Gd,Pr)PO4透明結晶化ガラスを用いた狭帯域UVB光源の原理実証が行えた。一方で、ガラス中の残留SiOH基濃度が高くバーナーで加熱すると発泡するため、シリカガラスとの熱融着が難しく、エキシマランプと一体化させた狭帯域UVB光源は作製できなかった。
赤外発光材料として有望なシリカ-YbPO4透明結晶化ガラスの合成の再現性が悪い、特に透明性の良い試料が得られにくいという課題に対し、Yb3+イオンに対する配位力の強い配位子を含む錯体をYb源とするというアプローチを見出し、合成中のYb3+イオンの凝集が抑えて透明性を向上させることができた。一方で、透明性とSiOH基濃度低減の安定的再現のため、合成法のさらなる改良が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度、Yb3+イオンに対する配位力の強い配位子を含む錯体をYb源とすることでシリカ-YbPO4透明結晶化ガラスの透明性が向上できることが見出された。次年度はこの手法を洗練させる。加えて、ガラスの透明性とSiOH基濃度低減の安定的再現のため、合成法のさらなる改良に取り組む。
加えて、シリカ-YbPO4透明結晶化ガラスによるエネルギー移動を利用した赤外発光材料の原理実証に着手する。今年度はEr3+イオンの共ドープを行い、シリカ-(Yb,Er)PO4透明結晶化ガラスによる1.5μm帯発光材料の開発を行う予定である。
また、シリカガラスと融着しても発泡しないほどにSiOH基濃度を低減したシリカ-(Gd,Pr)PO4透明結晶化ガラスを合成し、エキシマランプと一体化させた狭帯域UVB光源を試作する。SiOH濃度の低減には赤外発光性シリカ-YbPO4透明結晶化ガラスの合成に使用している同様の技術を適用する。
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