2019 Fiscal Year Annual Research Report
光触媒の革新的機能向上を目指すトラップエンジニアリング
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19H02806
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
加藤 英樹 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (60385515)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 酸窒化物 / 結晶方位 / Zスキーム / 共担持 |
Outline of Annual Research Achievements |
当研究室で開発したランタンタンタル酸窒化物とチタン酸ストロンチウムの酸窒化物固溶体について,今年度は酸化物前駆体の調製法が与える影響について調べた。従来の錯体重合法試料に比べて固相法試料では再現性良く酸素生成活性が向上することが確認された。これら2種類の試料とも30-50 nm程度の一次粒子の凝集し二次粒子が形成されており,モルフォロジーに明瞭な違いは見られなかった。一次粒子の結晶方位について調べると,錯体重合法試料では一次粒子がランダムな結晶方位で凝集しているのに対して,固相法試料では一次粒子の結晶方位が揃っていることが明らかとなった。固相法試料では酸素生成活性が向上したものの,メタノールを還元剤に用いた水素生成反応に対しては固相法試料で活性が向上することはなかった。このことから,酸化物前駆体合成法の検討では深い電子トラップを低減が困難であり,酸化物前駆体からの窒化過程,もしくは窒化後の後処理が重要であることが浮き彫りとなった。 ロジウムドープチタン酸ストロンチウム光触媒への微粒子担持について,光電着法でのルテニウム助触媒担持に加えて,金やルテニウムの微粒子を含浸法で共担持するとZスキーム型水分解の活性が約2倍程度に向上した。これらの試料について過渡吸光分光法によるキャリアダイナミクス解析を行ったところ,第2成分微粒子担持により励起電子がルテニウム助触媒へ効率良く移動していることが示唆された。詳細なメカニズム解明のためにはより詳細な解析が求められる。 バナジン酸ビスマス光触媒の高活性化について,トップダウン的微粒子化において効果的な熱処理は,それ自体は活性を低下させる要因であることが明らかとなった。革新的な高活性化のためには,熱処理を必要とせず整った表面を露出できる溶液法でワンステップでの微粒子合成を実現することが重要であることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
酸窒化物光触媒の革新的な高活性化を実現するためには従来にない新しい窒化プロセスもしくは窒化処理後の後処理が重要であることが確認された。この知見は本研究課題を遂行する上で非常に有用である。また,Zスキーム型光触媒系で水素生成を担うロジウムドープチタン酸ストロンチウムの約2倍となる高活性化が実現したことは,当該分野においてインパクトのある結果となっている。バナジン酸ビスマスのトップダウン的微粒子化で高活性化を成し遂げたこと,そして,その際に施す熱処理がバナジン酸ビスマスにとっては避けた方が良い処理であることが分かった。この知見は,今後バナジン酸ビスマスの更なる高活性化を進める上で非常に重要な知見である。
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Strategy for Future Research Activity |
酸窒化物光触媒のトラップ制御による革新的高活性化について,酸窒化物の分解が進行しない低温での窒化処理を検討する。それを実現するために500℃程度で溶融する低融点の共晶化合物を利用した窒化処理を行う。また,従来通り1000℃近い温度での窒化処理により合成した酸窒化物に対して元素追添やフラックス処理などの後処理によるトラップ制御を検討する。これらの検討は,当研究室で開発したランタンタンタル酸窒化物とチタン酸ストロンチウムの酸窒化物固溶体のほかに,より単純な組成のランタンチタン酸窒化物,バリウムタンタル酸窒化物,さらに窒化タンタルなどについて行う。 バナジン酸ビスマスについて,キャッピング剤を添加した溶液法により粒子サイズの制御された試料合成を検討する。ここで,高活性なバナジン酸ビスマスの合成が報告されている液固相法を主な溶液法として検討する。キャッピング剤の種類や濃度および合成温度を変化させることで,粒子サイズ,形状がどのように変わるのか系統的に調べる。 上記のような方策により高活性化した光触媒をZスキーム型反応系や光電極などへ応用し,水分解の高効率化を行う。 さらに,合成した試料を共同研究者である豊田工業大学・山方啓准教授に提供し,過渡吸収分光法を利用したキャリアダイナミクス計測により電子トラップについての情報を得る。得られた知見を合成条件などへフィードバックすることで更なる高活性化を行う。
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