2019 Fiscal Year Annual Research Report
Fabrication of Oxygen Reduction Electrocatalysts by One-Pot Process Using Ionic Liquids as Reaction Media
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19H02814
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
津田 哲哉 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (90527235)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 電極触媒 / 酸素還元 / 燃料電池 / イオン液体 / ワンポット |
Outline of Annual Research Achievements |
イオン液体を反応媒体に用いるとナノ粒子安定化剤や還元剤を使用することなく、ナノ粒子を調製することができる。なかでも、イオン液体中に存在する金属イオン種を熱還元する方法(イオン液体-熱還元法)はワンポットプロセスで金属ナノ粒子担持炭素材料を簡便かつ大量に合成できることから、産業化への展開が期待できる技術といえる。しかしながら、学術的に重要な基礎的知見が不足しており、今年度は金属塩の種類が得られる材料や電極触媒の性能に与える影響にターゲットを絞って調査した。白金(Pt)前駆体(ビス(2,4-ペンタンジオナト)白金(II)(Pt(acac)2))、ニッケル(Ni)前駆体(Ni[Tf2N]2またはNi(acac)2)、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)をイオン液体(トリメチルプロピルアンモニウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミド([N1,1,1,3][Tf2N]))に添加し、イオン液体-熱還元法によるPtNiナノ粒子担持MWCNT(PtNi/MWCNT)コンポジットの合成を試みた。どちらのニッケル前駆体を用いてもPtNi/MWCNTを得ることはできたが、熱安定性の高いNi[Tf2N]2を用いた場合には、ナノ粒子の粒径は小さく、ナノ粒子に含まれるNi含有量も10 at%程度低くなった。次に、PtNi/MWCNTは固体高分子形燃料電池用の酸素還元電極触媒としての利用が期待されるため、その電極触媒性能を調査したところ、市販触媒を超える耐久性を示すことが分かった。また、その傾向はNi(acac)2を用いた際により顕著となった。Ni(acac)2はNi[Tf2N]2とは異なり、[N1,1,1,3][Tf2N]への溶解度が低く、Ni(acac)2を単分散させた状態で試料作製を行ったが、本手法において前駆体のイオン液体への溶解度は大きな問題とはならないことを示唆する結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
イオン液体-熱還元法において未解明かつ重要な基礎的知見の収集をこれまで検討してきたが、本研究では固体高分子形燃料電池用酸素還元電極触媒として有望であるPtNi/MWCNTの合成をモデルケースにして、それらに取り組んできた。Ni前駆体のイオン液体に対する溶解度が低いとPtNi/MWCNTの合成は不可能と考えていたが、溶解度の差異がその合成に与える影響は限定的であることを見い出した。不溶性かつ結晶水を有するNi前駆体(NiC2O4.2H2O)でさえ、イオン液体-熱還元法に適用できたのは予想外の結果であった。これは本手法の優位性を示す1つの特徴となりうるため、より詳細な調査を行っている。PtNiナノ粒子の結晶構造については、X線回折や電子線回折により調査したが、酸素還元電極触媒として有望なNiコアPtシェルナノ粒子の形成に帰属できるデータは得られず、面心立方構造のPtNi固溶体のみが形成された。得られたPtNi/MWCNTの酸素還元電極触媒としての評価は電気化学的手法を駆使して行い、PtNiナノ粒子の組成や粒径が似たような値であっても、ニッケル前駆体の種類が異なると、電極挙動が大きく変化する事例のあることが分かった。本研究課題で取り組む予定にしているオペランド透過型電子顕微鏡(TEM)観察によるPtNi/MWCNTの形成メカニズム解明についても、実験準備は着々と進んでおり、次年度には実験を開始できると考えている。以上のことを鑑みると、本研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
イオン液体-熱還元法に適用する加熱プロセスを一気にターゲットとする温度まで上昇させるのではなく、加熱温度や時間を階段状に変化させることで、PtNi/MWCNTの形成過程における重要な情報が得られる可能性が高く、これと酸素還元触媒能との相関性について調査することで、Ni前駆体の種類がPtNi/MWCNTの酸素還元電極触媒に大きな影響を与える原因を明らかとする。また、材料化学的に価値のあるNiコアPtシェルナノ粒子を本手法で合成するための条件検討を行い、ワンポットプロセスでNiコアPtシェルナノ粒子を化学安定性の高いMWCNTやグラフェンのようなsp2カーボン材料へ担持する方法を確立したい。その際、PtNi/MWCNT形成プロセスのオペランドTEM観察によって得られた情報を十分に活用する。また、グラフェンを炭素担体とすることで、単位面積あたりに存在するナノ粒子の数を制御することが容易になると考えられるため、これまで検討例のあまりないナノ粒子の数密度が酸素還元電極触媒の性能に及ぼす影響を考慮した新たな材料設計指針についても提案したい。本研究においては、PtNi/MWCNTをモデル材料としているため、酸素還元電極触媒としての評価後、その形態や組成が大きく変化すると予想され、これが触媒性能の優劣を決定づける重要な情報となる可能性が高い。そのため、高分解能TEMやFE-SEMを使用することにより、原子レベルでの情報収集を行い、3年目以降に研究が本格化する工学的にインパクトのある高性能酸素還元電極触媒作製法の確立に繋げる。
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