2019 Fiscal Year Annual Research Report
Development of Stimulated Raman Stark Spectroscopy toward Space- and Time-Resolved Operando Analysis of Batteries
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19H02821
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
重藤 真介 関西学院大学, 理工学部, 准教授 (10756696)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 非線形ラマン分光 / ハイブリッドペロブスカイト / 電場応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、我々のエネルギー社会に欠かせない電池において、電場が本質的な役割を果たす分子現象を高い時空間分解能でオペランド計測するための革新的技術である「誘導ラマンシュタルク分光顕微鏡」を開発し、有機無機ハイブリッドペロブスカイト太陽電池およびリチウムイオン電池への応用を通じて、電場応答の観点から電池の動作機構を解明することを目的とする。 2019年度は開発する装置の核となる非線形ラマン顕微鏡部分の構築に取り組んだ。光源となるスーパーコンティニュームレーザー(白色レーザー)の選定・購入、ならびにカスタム正倒立顕微鏡の設計・購入を行った。それらを現有の分光器およびCCD検出器と組み合わせることで非線形ラマン顕微鏡を構築することにしたが、当初計画の誘導ラマン散乱(SRS)過程を用いた場合、CCD検出器の量子効率がかなり低い波長領域で信号光を検出することになってしまうため、まずはより短波長に信号光が現れるコヒーレントアンチストークスラマン散乱(CARS)を用いて装置開発を行うこととした。テスト試料であるL-シスチン粉末およびポリスチレンビーズの空間分解CARSスペクトルの測定に成功するところまで到達した。 装置開発と並行して、有機無機ハイブリッドペロブスカイト薄膜の基礎特性を理解するため、低振動数偏光ラマン分光を用いたグレインの配向イメージングを行った。水分に対する高い耐久性と化学的な多様性の観点からハイブリッドペロブスカイトの中でも注目を集めている2次元ペロブスカイトのプロトタイプであるヨウ化鉛ブチルアンモニウムに対してこの手法を適用し、不均一なグレイン構造を簡便に可視化できることを実証した。また、自発ラマン顕微鏡を用いてイオン液体の電場応答の観測にも取り組み、電場印加によるイオン液体の局所的な密度変化という興味深い現象を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
非線形ラマン分光顕微鏡の基本部分の構築は完了することができたが、以下の2点において当初の計画とは異なっているため、本研究課題の進捗状況を「やや遅れている」と判断した。1点目は、検出器の感度の関係で、非線形ラマン過程としてSRSではなくCARSを用いていることである。2020年度以降、現有のCCD検出器よりも長波長の近赤外域で感度を有するInGaAs検出器を導入することができれば、SRS顕微鏡への改造が可能となる。しかし、一般的によく問題とされる非共鳴バックグラウンド信号においてSRSとCARSとで顕著な差が認められなければ、CARSでも特段の問題は生じないと考えられる。2点目は電場印加によるCARSスペクトル変化の測定がまだ実施できていない点である。これらの点については、2020年度以降での修正・改善を図る。
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Strategy for Future Research Activity |
電場印加による非線形ラマンスペクトルの変化の検出を最優先して研究を進める。すでに自発ラマン顕微鏡と組み合わせた測定で使用している電場印加装置(ファンクションジェネレーター、電場印加セルなどからなる)を、2019年度に構築したCARS分光顕微鏡に導入し、テスト試料およびハイブリッドペロブスカイト薄膜に対する測定を行う予定である。さらに、近赤外検出器が入手可能となった場合にはSRSによる電場応答の観測も試みる。
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