2021 Fiscal Year Annual Research Report
細菌における多様なリグニン由来芳香族化合物の外膜・内膜輸送システムの全容解明
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19H02867
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Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
政井 英司 長岡技術科学大学, 工学研究科, 教授 (20272867)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菱山 正二郎 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (00353821)
桑原 敬司 長岡技術科学大学, 工学研究科, 准教授 (50525574)
城所 俊一 長岡技術科学大学, 工学研究科, 教授 (80195320)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | リグニン / 芳香族化合物 / 外膜輸送 / 内膜輸送 / Sphingobium属細菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
Sphingobium sp. SYK-6株のpcaK破壊株の高pH条件 (基質のイオン化が促進される条件)におけるバニリン酸、シリンガ酸、フェルラ酸の変換速度は、野性株の30%、14%、41%に低下した。また、同条件のN,N’-dicyclohexylcarbodiimide (DCCD)存在下においてpcaK破壊株の上記基質に対する変換能はほぼ消失した。以上の結果から、SYK-6株においてバニリン酸、シリンガ酸、フェルラ酸の取り込みにはPcaKに加えてABC輸送体が関与することが強く示唆された。そこでSYK-6株に存在するABC輸送体を構成すると予想される14個の推定substrate binding protein遺伝子の内、12個について破壊株を作製した。加えて、リグニンからの有用物質生産にSYK-6株と同様に利用されるNovosphingobium aromaticivorans DSM 12444株のリグニン由来芳香族化合物の内膜輸送体についても解析を行い、PcaKが主要な役割を担うことを明らかにした。
SYK-6株にTon複合体を構成するtonB1-exbB1-exbD1-exbD2遺伝子をプラスミドで導入して高発現させると、複数のリグニン由来芳香族化合物の変換能が向上したことから、TonB-dependent transporter (TBDT)がこれら化合物の外膜輸送に関与すると予想された。今年度は、SYK-6株に74個存在する推定のTBDT遺伝子の内、以前作製したものと合わせて72個のTBDT遺伝子破壊株の取得に成功した。これら破壊株のバニリン酸、シリンガ酸、フェルラ酸について網羅的な生育能の測定を行った結果、複数の遺伝子破壊株で生育能の低下が観察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SYK-6株のバニリン酸、シリンガ酸、フェルラ酸の取り込みにPcaKが主要に働くこと、またATP合成酵素の阻害剤によってpcaK破壊株によるこれら化合物の変換能がほぼ消失したことから上記化合物の取り込みにはPcaK以外にABC輸送体が関与することが示唆された。今年度、SYK-6株のABC輸送体を構成すると予想される14個の推定substrate binding protein (SBP)遺伝子の内、12個の遺伝子について破壊株を取得している。今後、これらの破壊株を解析することで取り込みに関与するABC輸送体のSBP遺伝子を同定できると考えられる。また、リグニンからの有用物質生産にSYK-6株と同様に利用されるN. aromaticivorans DSM 12444株のリグニン由来芳香族化合物の内膜輸送にPcaKが主要に関与することを明らかにした。今後、SYK-6株とDSM 12444株のpcaKの機能比較を進めることにより、物質生産により効果的な輸送体遺伝子を利用することが可能になる。
外膜輸送体については、SYK-6株に74個存在する推定のTBDT遺伝子の内、以前作製したものと合わせて72個のTBDT遺伝子について破壊株を取得した。複数の遺伝子破壊株でバニリン酸、シリンガ酸、フェルラ酸での生育能の低下が見られており、これらを精査することにより実際にリグニン由来芳香族化合物の外膜輸送に関与する遺伝子を同定できることが見込まれる。
前年度の成果である、SYK-6株において複数のリグニン由来芳香族化合物の外膜輸送にTBDTが関与することを示唆する結果と、外膜の安定性に関わるTol-Palシステムの解析結果を国際誌に発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
SYK-6株のABC輸送体を構成すると予想される12個の推定substrate binding protein遺伝子について破壊株を作製した。今後は、残りの遺伝子の破壊株を作製するとともに、これら破壊株のバニリン酸、シリンガ酸、フェルラ酸での生育能および基質変換能を解析し、各基質の取り込みへのABC輸送体の関与の有無を明らかにする。また、SYK-6株とN. aromaticivorans DSM 12444株のPcaKの機能を比較する。
SYK-6株に74個存在する推定のTBDT遺伝子の内、以前作製したものと合わせて72個のTBDT遺伝子破壊株の取得に成功した。これら破壊株のバニリン酸、シリンガ酸、フェルラ酸について網羅的な生育能の測定を行い、複数の遺伝子破壊株で生育能が低下することを見出した。今後は、全ての破壊株について生育試験を実施し、生育能の低下が認められた破壊株について基質変換能を測定し、基質取り込みに関与する遺伝子を明らかにする。また相補実験により目的遺伝子の破壊による影響か否かを明確にする。関与のレベルが高いTBDT遺伝子が見出された場合には、当該遺伝子の過剰発現の基質変換能への影響を解析し、高効率な物質生産株を構築する上で有用な情報を得る。
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Research Products
(4 results)