2020 Fiscal Year Annual Research Report
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19H02872
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
加藤 節 広島大学, 統合生命科学研究科(先), 助教 (80762070)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 大腸菌 / 定常期 / 細胞死 / 出芽酵母 |
Outline of Annual Research Achievements |
回分培養後期の栄養飢餓条件において細胞がどのような過程で死にゆくのかを明らかにするため、大腸菌と出芽酵母をモデルとして今年度は以下の項目について研究を行った。 栄養飢餓時の大腸菌細胞が死にゆく過程については、どの程度の細胞内還元力やATPが細胞内に残存しているかを経時的に解析した。その結果、どちらの条件についても細胞の生菌率の減少よりも遅いスピードで測定因子が減少していく様子が観察された。つまり、細胞内に還元力、ATPを維持しながらも再増殖できない細胞が一部存在することが示唆され、細胞死(ここでは再増殖能力の喪失で定義)の原因はこれら因子には依存しない可能性が考えられた。また、死細胞染色試薬であるPropidium Iodideを用いて死細胞において膜恒常性が維持されているのかどうかを検証した。その結果、再増殖能力をほぼすべての細胞が喪失したような条件であってもすべての細胞がPIで染まるわけではないことがわかった。この結果は前述の結果と矛盾せず、細胞は再増殖能力を失ったとしてもエネルギーを保持した場としては存在しうることが示唆された。 出芽酵母の死にゆく過程については、前年度観察した現象が異なる実験条件でも観察されるのかを知るために実験室出芽酵母株(BY4741)と死細胞指示薬Phloxine Bを用いて検証した。その結果、これらの異なる条件においても細胞が死ぬ際に細胞サイズが小さくなる現象が観察され、この現象にはある程度の一般性があることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大腸菌の細胞死については、今年度の目標である代謝に関連する細胞内のエネルギー物質に加えて膜恒常性についてもその機能低下の程度を死菌率と比較して解析することができたため。出芽酵母の細胞死については異なる実験室株、異なる染色条件でも同様の結果が観察され、細胞死に伴う収縮にある程度の一般性があることを示せたため。
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Strategy for Future Research Activity |
大腸菌の細胞死については、これまで細胞膜の恒常性、細胞内還元力、細胞内ATP濃度、そしてGFP発現を指標としたタンパク質合成能力を指標として、どの要素の機能の低下(もしくは細胞内量の低下)が細胞の生菌率の低下とよく相関するかどうかを解析してきた。その結果、タンパク質合成能力の喪失が最も強く生死と結びつくようであった。そこでタンパク質合成能力に改めて注目し、どのような理由によってタンパク質合成能力が失われるのかを検討する。一部の死細胞においてはタンパク質を新規に合成する能力が残存している様子が観察されており、この現象については再現性の確認も含めて詳細に解析する。 出芽酵母の細胞死については、細胞死の際に収縮するという現象から、死のエンドポイントは膜の破裂や細胞内構造体の崩壊にあると予想することができる。そこで、収縮する原因を探ることで細胞死を引き起こすメカニズムを明らかにすることを目指す。
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