2020 Fiscal Year Annual Research Report
Global control of microbial community based on the role of CO2, the most general quormone
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19H02877
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
上田 賢志 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (00277401)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高野 英晃 日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (50385994)
西山 辰也 日本大学, 生物資源科学部, 助教 (10759541)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | CO2 / バクテリア / 遺伝子発現 / 群集構造 / セカンドメッセンジャー |
Outline of Annual Research Achievements |
環境中で最も普遍的なクオルモンとして機能していると考えられるCO2は、様々な微生物によって受容され生態系を形作っていると推測される。ここでは、CO2が微生物に多面的に及ぼすと予想される諸影響を網羅的に解析し、一つの普遍的環境因子が微生物コミュニティーに対して及ぼす影響の多様性を遺伝制御の観点から理解することを目的として検証を進めた。特に、CO2によって一斉にその発現が変動する遺伝子群の実態を解明することで、普遍的かつ有効な代謝活性の指標であるCO2が、最も単純な生物群集の決定要因として作用することを明確にする。 昨年度の検証において、高濃度CO2への暴露による複雑な転写プロファイルへの影響が観察されたことを受けて、短時間での直接の応答を観察する目的でタンパク質レベルの観察を試みた。同一の枯草菌の細胞を通常大気と5% CO2添加条件でそれぞれ1hインキュベートした細胞について、その細胞外画分に含まれるタンパク質を質量分析で網羅的に比較した。その結果、存在量に有為な差のあるタンパク質が複数検出されたが、特にhigh-CO2で多く認められたタンパク質の中には、リボソームタンパクをはじめとする、細胞内タンパクが複数存在していたことから、本条件にさらすことで一部の細胞に損傷が起こりその内容物が漏出した可能性が考えられた。一方、特定の細胞壁結合タンパク質がhigh-CO2で顕著に減少するなど、特異的な発現抑制の結果と捉えられる現象も観察された。 上記と独立に、多様な生理活性物質を生産する特性をもつことで知られる放線菌群の増殖と分化に対するCO2の影響を調査した。その結果、分化や二次代謝に対して高濃度CO2が促進的に作用するものと、逆に抑制的に作用するものが認められることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
炭酸ガス導入装置による培養中の炭酸濃度の制御が、装置の構造上の問題から予定の通りに進行しなかったこと、また高濃度炭酸ガスへの暴露が細胞の構造に物理的な影響を及ぼす可能性が判明しそれを低減する条件の検討が必要になったため。
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Strategy for Future Research Activity |
炭酸ガス導入装置を用いて一定の炭酸濃度下で培養した細胞を調製し、遺伝子発現プロファイルの比較などを改めて実施する。短時間での応答の観察のためには、ソーダ石灰を用いて炭酸を徐々に吸収する条件などを試すことで改めて検証を実施する。より明確な応答を観察できるモデルを探索することも並行して進める。
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