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2020 Fiscal Year Annual Research Report

ヒト由来細胞小胞体におけるタンパク質のジスルフィド結合形成機構

Research Project

Project/Area Number 19H02881
Research InstitutionTohoku University

Principal Investigator

門倉 広  東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (70224558)

Project Period (FY) 2019-04-01 – 2022-03-31
Keywordsジスルフィド結合 / 哺乳動物 / フォールディング / 分泌タンパク質 / 小胞体 / PDI
Outline of Annual Research Achievements

小胞体内に送り込まれてくるタンパク質に対してPDIファミリー酵素がどのような順番で作用するのかは不明である。LDLレセプター(LDLR)の立体構造形成は3つのフェーズに区分される。2020年度には、PDIファミリー酵素がどのようなタイミングでLDLRの新生鎖と結合するのかを2重免疫沈降によって調べた。その結果、興味深いことに、1) 3つのフェーズのいずれに於いても、調べた4種類の酵素すべてが翻訳途上の新生鎖に結合すること、また、2) LDLRの新生鎖の翻訳合成は少なくとも3箇所で一時停止するが、そのようなタイミングで酵素・基質複合体が蓄積することを見出した。後者の結果から、PDIファミリー酵素は特定のタイミングでLDLRの新生鎖に働きかけることが初めて明らかになった。
更に、本年度は次の問題を解決するために実験系の改善をおこなった。新生鎖の鎖長が短い時点ではメチオニン残基の数が少ないため新生鎖に取り込まれる放射能の量が少なく検出が困難であった。本年度は、この問題を解決するため、LDLRの成熟型タンパク質のN末端にメチオニン残基を多数導入したLDLR変異体を作成した。繰り返し配列はプラスミドを不安定化するため、複数の配列を試し、目的の実験に最適の配列を選んだ。その結果、新生鎖のシグナルを検出するための露光時間を、これまでの2から3ヶ月から、1から1.5ヶ月へと、大きく短縮することに成功した。
以上のほか、小胞体内に存在する2種類の酵素GPx7とGPx8の機能を試験管内および細胞内で比較することによって、前者の酵素の方が、PDIファミリー酵素を酸化型に維持する能力が高いことを示す結果を得て、J. Biol. Chem.誌に発表した。
更に、PDIファミリー酵素の基質を同定するために研究代表者らが開発した独自の手法についてまとめて、和文誌「化学と生物」に発表した。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

2020年度の解析では、PDIファミリー酵素がどのようなタイミングで細胞表層タンパク質の新生鎖と結合するのかを2重免疫沈降によって調べた。その結果、興味深いことに4種類のPDIファミリー酵素が特定のタイミングでLDLRの新生鎖に働きかけることが判明した。特定のタイミングで酵素が新生鎖に作用することを細胞内で示した結果はこれが初めてであり、ジスルフィド結合導入酵素の作用を考える上で極めて示唆に富む知見である。また、今回、ジスルフィド結合導入システムに技術的な改良を加えることに成功した。その結果、翻訳合成途上のLDLRを観察するために必要な露光時間を大きく短縮するとともに翻訳の初期過程におけるフォールディングをより明瞭に観察することができるようになった。これは技術的な大きな進展である。

Strategy for Future Research Activity

2021年度は、次のような2つのアプローチによって、小胞体内に送り込まれてくるタンパク質の折り畳み過程の詳細や関連の病気の発症の仕組みを理解する。
1. 新生鎖の立体構造形成における各PDIファミリー酵素の役割の詳細の解明
2020年度における解析から、4種類のPDIファミリー酵素が、特定のタイミングでLDLRの新生鎖に働きかけることが判明した。このような結果を受けて、2021年度には、siRNAを利用したノックダウン実験とジスルフィド結合形成モニタリング系を組み合わせて解析することによって、LDLRの立体構造形成に果たす各PDIファミリー酵素の役割の詳細を解明する。
2. β-プロペラドメインのサブドメイン1と2に存在するミスセンス変異がLDLRの折り畳み反応に及ぼす影響の解析
これまでの解析から、LDLRのN末端に存在するR1ドメインが正しく折り畳まれるためには、その遥か下流に存在するβ-プロペラのサブドメインの1と2が必要であることが判明した。この領域には、高コレステロール血症の原因となるミスセンス変異が多数知られている。2021年度には、このようなミスセンス変異がLDLRの新生鎖の折り畳みに及ぼす影響を申請者らが開発したジスルフィド結合形成モニタリング系を利用して解析する。このようなアプローチによって、家族性高コレステロール血症の発症の機序の理解に役立てる。

  • Research Products

    (5 results)

All 2021 2020 Other

All Journal Article (2 results) (of which Peer Reviewed: 2 results,  Open Access: 1 results) Presentation (2 results) Remarks (1 results)

  • [Journal Article] Characterization of the endoplasmic reticulum-resident peroxidases GPx7 and GPx8 shows the higher oxidative activity of GPx7 and its linkage to oxidative protein folding2020

    • Author(s)
      Kanemura Shingo、Sofia Elza Firdiani、Hirai Naoya、Okumura Masaki、Kadokura Hiroshi、Inaba Kenji
    • Journal Title

      Journal of Biological Chemistry

      Volume: 295 Pages: 12772~12785

    • DOI

      10.1074/jbc.RA120.013607

    • Peer Reviewed / Open Access
  • [Journal Article] 哺乳動物細胞PDIファミリー酵素の生理的な基質の同定: ヒト由来分泌タンパク質の効率良い生産系の開発にむけて2020

    • Author(s)
      門倉 広
    • Journal Title

      化学と生物

      Volume: 58 Pages: 441-443

    • DOI

      10.1271/kagakutoseibutsu.58.441

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] ジスルフィド結合が形成される仕組み:独自のアプローチで迫る、ヒト分泌タンパク質の生細胞内における立体構造形成機構2021

    • Author(s)
      門倉 広
    • Organizer
      第5回 有機・生命・計測科学研究交流セミナー
  • [Presentation] Biochemical characterizations of ER-resident peroxidases, GPx7 and GPx8, reveal their distinct oxidative activities.2020

    • Author(s)
      Shingo Kanemura, Elza Firdiani Sofia, Naoya Hirai, Masaki Okumura, Hiroshi Kadokura and Kenji Inaba
    • Organizer
      第20回 日本蛋白質科学会年会
  • [Remarks] 門倉 広|東北大学 大学院 生命科学研究科

    • URL

      https://www.lifesci.tohoku.ac.jp/research/teacher/detail---id-19734.html

URL: 

Published: 2021-12-27  

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