2019 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of biological functions and synthetic machinery of bacterial glucuronic acid-containing glycolipids
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19H02888
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
沖野 望 九州大学, 農学研究院, 准教授 (90363324)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
角田 佳充 九州大学, 農学研究院, 教授 (00314360)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | グルクロノシルセラミドグ / グルクロノシルジアシルグリセロール / Zymomonas mobilis / 緑膿菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
細菌由来の複合糖脂質はバリア機能などの重要な役割を有すると共に、感染時に宿主の免疫系を活性化することから、その構造や生物機能に関する研究がなされている。近年、細菌由来の単純な糖脂質にリンの飢餓応答や細菌感染における免疫細胞の活性化などの重要な役割があることが明らかになり、これら糖脂質の新たな生物機能に注目が集まっている。本研究では、緑膿菌がリン欠乏時に合成するグリセロ糖脂質の構造と生物機能並びに、細菌由来のスフィンゴ糖脂質の生物機能を解明すると共に、それら糖脂質の合成マシナリーを明らかにする。 本年度は以下の二つの項目に関して研究を進めた。 1. 緑膿菌がリン欠乏時に合成する糖脂質の構造と生物機能の解明 緑膿菌をリン欠乏培地で培養するとグルクロノシルジアシルグリセロール(GlcADG)に加えて、グルコシルジアシルグリセロール(GlcDG)を合成することを明らかにしている。本年度は緑膿菌由来のGlcDG合成酵素を大腸菌で大量発現させ、精製すると共に、酵素の生化学的な性質を調べた。また、GlcDG合成酵素を過剰発現する大腸菌が新規な糖脂質を合成することを見出した。 2. Zymomonas mobilisのグルクロノシルセラミド合成酵素の機能解析 Z. mobilisに見出したCer GlcATの機能を明らかにするために大腸菌で発現させた酵素を用いて、生化学的な解析を行うと共に、遺伝子欠損株の細胞増殖について解析を行った。また、Z. mobilisのCer GlcATのホモログをSphingobium yanoikuyaeのゲノム中に見出し、遺伝子をクローン化し、大腸菌で発現させたところ、当該遺伝子がCer GlcATであることを明らかにした。Cer GlcATの高次構造解析に関しては、Z. mobilis由来のCer GlcATを大量発現させ、結晶化のスクリーニングを進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は以下の二つの項目に関して研究を進めた。 1. 緑膿菌がリン欠乏時に合成する糖脂質の構造と生物機能の解明 緑膿菌をリン欠乏培地で培養するとグルクロノシルジアシルグリセロール(GlcADG)に加えて、グルコシルジアシルグリセロール(GlcDG)を合成することを明らかにしている。本年度は緑膿菌に見出したGlcDG合成酵素のホモログをを大腸菌で大量発現させ、精製すると共に、酵素の生化学的な性質を調べた。また、当該酵素の欠損株を作成したところ、欠損株ではリン欠乏時にGlcDGが合成されなくなった。一方、GlcDG合成酵素を過剰発現する大腸菌がGlcDGに加えて、新規な糖脂質を合成することを見出したので、LC-MS/MSを用いて推定構造を決定した。 2. Zymomonas mobilisのグルクロノシルセラミド合成酵素の機能解析 Z. mobilisに見出したCer GlcATの機能を明らかにするために大腸菌で発現させた酵素を用いて、生化学的な解析を行うと共に、遺伝子欠損株の細胞増殖について解析を行い、CerGlcAT欠損株の細胞増殖が微好気条件下において低下することを見出した。また、Z. mobilisのCer GlcATのホモログをSphingobium yanoikuyaeのゲノム中に見出し、遺伝子をクローン化して大腸菌で発現させたところ、当該遺伝子がCer GlcATであることを明らかにした。一方、Cer GlcATの高次構造解析に関しては、Z. mobilis由来のCer GlcATを大量発現させ、結晶化のスクリーニングを進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は以下の二つの項目に関して研究を進める。 1. 緑膿菌が合成する糖脂質と宿主免疫の関係を明らかにする 緑膿菌に見出した三種類の糖脂質(GlcADG、GlcDG、LipidX)は緑膿菌が感染した際に発現し、宿主免疫によって認識されることが想定される。我々は予備的な実験により、緑膿菌がリン欠乏時に合成する三種類の糖脂質の中でGlcDGがヒトやマウスのC型レクチン受容体であるMincleを活性化できることを明らかにしている。本年度は、GlcDGに加えて、GlcADGとLipid Xが宿主免疫に及ぼす影響を明らかにする。実際には各種ヒトC型レクチン受容体を発現し、活性化によりGFPが発現するレポーター細胞のライブラリーに対して、精製したGlcDG、GlcADGとLipid Xを処理することで、これら糖脂質を認識して宿主免疫を活性化するC型レクチン受容体を探索する。また、これら糖脂質の認識にはC型レクチン受容体以外の受容体が関与している可能性もあるので、マウスの骨髄由来樹状細胞に対してこれら糖脂質を作用させた後に、サイトカインの産生を調べる実験や遺伝子発現の差異をRNA-Seq解析により調べる実験も計画している。 2. 細菌由来の糖脂質合成酵素の高次構造解析による糖脂質の合成マシナリーの解明 我々はこれまでに、Z. mobilis 由来のGlcACer合成酵素を同定し、大腸菌を用いた発現系を構築し、結晶化のスクリーニングを進めている。本年度は、新しく同定したS. yanoikuyae由来のGlcACer合成酵素に関しても酵素を大量発現させ、精製方法を確立すると共に、得られた酵素を用いて結晶化のスクリーニングを行い、高次構造を明らかにする。本項目については、研究分担者である角田教授が主体となって研究を進める。
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Research Products
(4 results)