2019 Fiscal Year Annual Research Report
Studies on the opening mechanism of tight junction by MA026
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19H02893
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
臼井 健郎 筑波大学, 生命環境系, 教授 (60281648)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | タイトジャンクション / Claudin / 環状デプシペプチド / 構造活性相関 |
Outline of Annual Research Achievements |
タイトジャンクション(TJ)は、皮膚や粘膜等の上皮で細胞同士を強く接着する細胞間接着構造の一つであり、体外の異物に対する主要なバリア機能を果たしている。我々はニジマスの腸内細菌が生産するMA026が、TJを緩める(開口させる)ことを明らかにし、本物質がバイオ医薬品の非侵襲的投与に有効である可能性を報告した。MA026は、TJ構成タンパク質であり、ヒトでは27種あるclaudinファミリーの1つ、claudin-1 と結合することが報告されている。そこでMA026の作用を明らかにする目的で研究を開始したが、報告されている構造に誤りがあることを見出し、活性を示す構造の特定に成功した。 本年度は、訂正した構造をもつMA026を用いて、以下の2項目に関する結果が得られた。 1)MA026のアラニンスキャン体を用いたTJ開口活性に関わる構造活性相関検討を行い、3つの親水性アミノ酸残基をアラニンに置換した類縁体も活性を有することを明らかにした。そこでこれらのアミノ酸残基を利用してビオチン化体の合成を行ったところ、TJ開口活性を維持していることが確認された。 2)MA026のclaudin認識機構の解明を進めるため、直接の相互作用を検討した。ペプチド断片とMA026を用いて表面プラズモン共鳴法による検討を行ったが、十分なシグナルを得ることが出来なかった。また、claudinタンパク質の大腸菌発現をGST融合タンパク質として試みたが、不溶性画分に存在した。次に細胞レベルでの活性について、結合の報告があるclaudin-1のVFDSLL配列とその他のclaudinの相同領域ペプチドによるTJ開口活性に対する競合阻害検討を行った。その結果、VDFSLL配列、及びいくつかの相同領域ペプチドでも阻害が見られたが、多くの相同領域ペプチドでは阻害が見られず、claudin特異性が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
TJ開口に関わるMA026の構造活性相関検討を行い、アラニンスキャン体のTJ開口活性から親水性のアミノ酸残基をアラニンにしても活性を維持していることを明らかにした。さらにこれらのアミノ酸残基の位置を利用してビオチン化体の合成を行い、TJ開口活性を維持していること、また予備的な結果ではあるが蛍光プローブと結合したストレプトアビジンを用いることで、ビオチン化MA026が細胞間に局在することを確認している。今後、細胞染色の最適化を行うことで、結合のclaudin-1依存性を明らかに出来ると考えている。一方、表面プラズモン共鳴法を用いた直接の相互作用については、ペプチド断片を用いた方法では十分なシグナルが得られず、またGST融合claudin-1は不溶性になったために実験を中断した。しかしながらHISタグ融合claudin-1での予備的な精製には成功しており、他のタグも並行して進めることにより直接の相互作用も検出できると考えている。また、MA026の結合部位と考えられているVFDSLLペプチドや、他のclaudinタンパク質の相同領域ペプチドを用いた細胞レベルでの競合阻害実験では、VFDSLLと同様の強い阻害が複数のペプチドでも見られていることから、claudin特異性を示すことが出来たとともに、構造活性相関の情報も得られることが出来た。今後これらの構造情報を基に、細胞レベルでの構造活性相関ををより詳細に進めることが出来ると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度も引き続きclaudinタンパク質を特異的に結合・検出するMA026類縁体を創製するための基礎的知見を得るため、以下の2つを並行して進める。 1)MA026のclaudin認識機構の解明を進めるとともに、得られた構造情報を基にしてヒトでは27種類存在すると考えられている各種claudin特異的結合類縁体の設計・合成を行う。昨年度はclaudinが不溶性画分で発現していたため、HISタグなど不溶性でも精製できるタグや、その他のタグに変更して発現を試みる。発現・精製ができた場合は表面プラズモン共鳴法により、MA026とVFDSLLペプチドとの相互作用を検討する。結合が見られた場合、MA026のアラニンスキャン体と各claudinタンパク質のVFDSLL相同領域との相互作用を検討して、結合に関与するアミノ酸と、その結合を明らかにするとともに、結合モデルを作成する。得られた結合モデルを元に、各claudinタンパク質と特異的に相互作用するMA026類縁体を設計・合成する。 2)各種caludinタンパク質発現細胞を構築し、MA026類縁体プローブの結合アッセイを行う。MA026合成類縁体を蛍光プローブ化したのち、各種claudin発現細胞への結合を指標にclaudin特異性を検討する。昨年度作成したビオチン化体を利用して、MA026処理細胞でのMA026局在の情報を得るとともに、各種claudinタンパク質、または他のclaudinのVFDSLL相同配列に入れ替えた組換えclaudin-1を導入したヒト骨肉腫細胞HT1080を作成し、蛍光プローブの結合をFACSや蛍光顕微鏡で検討する。
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Research Products
(7 results)