2022 Fiscal Year Annual Research Report
Structural analysis of aminoglycoside antibiotic biosynthetic enzymes
Project/Area Number |
19H02895
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
工藤 史貴 東京工業大学, 理学院, 准教授 (00361783)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | アミノグリコシド系抗生物質 / 生合成 / 酵素 / タンパク質構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、アミノグリコシド系抗生物質生合成マシナリーの人為的改変による新規抗生物質創製を念頭におき、生合成に関わる酵素の機能構造解析を通じた生合成基盤を構築することを目的としている。2020年度までにカナマイシン生合成経路の全貌解明に成功した。2021年度は1,4-ジアミノサイクリトールを有するイスタマイシン類の生合成酵素の機能解明に向けて手掛かりを得たので、2022年度はそれを基に研究を進めた。 イスタマイシン類は擬似二糖アミノグリコシドであり、カナマイシン等に見られる1,3-ジアミノサイクリトールである2-デオキシストレプタミン(2DOS)とは異なる1,4-ジアミノサイクリトールを有している。いずれも共通的な中間体である2-デオキシ-scyllo-イノサミン(DOIA)経由で生合成されることが示唆されていたが、二つ目のアミノ基導入のタイミングがそれぞれで異なる可能性が考えられた。すなわち、2DOSはDOIAが脱水素化されて生じるケトン中間体がアミノ化を受けることで生合成されるため、1,4-ジアミノサイクリトール生合成でもDOIAの脱水素化とアミノ化が起こる可能性が考えられた。しかし先行研究から、DOIAが配糖化されてから二つ目のアミノ基が導入される可能性も考えられた。そこで2022年度は、DOIAの配糖化が先に起こる経路を検証した。その結果、DOIAが糖転移酵素によりN-アセチルグルコサミニル化され、さらに脱アセチル化されグルコサミニル化されたDOIA(GlcN-DOIA)が生成することが明らかとなった。またGlcN-DOIAは、推定脱水素化酵素とアミノ基転移酵素により二つ目のアミノ基が導入されることが示唆された。 さらに、4'-デオキシブチロシン生合成における4'-デオキシ化機構解明に向けて研究を進めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は、2021年度に得た知見を手掛かりにして研究を進めることで、イスタマイシン類の生合成において、DOIAが配糖化された後に二つ目のアミノ基が導入することを強く示唆することができた。この結果は、相同性を有する酵素どうしでも基質認識機構が異なることを示している。すなわち、酵素の基質選択性を正確に理解することが、生合成マシナリーを活用した新規物質創成に重要な知見となることを改めて示すことができた。最終年度となる2023年度に向けて酵素の結晶化も進めており、アミノグリコシド抗生物質の生合成中間体に対する基質認識機構を明らかにするために進展があったと考えている。 また、4'-デオキシブチロシン生合成において4'位のデオキシ化に関わると推定される酵素を絞ることに成功したことは、アミノグリコシド抗生物質の新たな修飾反応を触媒する酵素の機能構造解明に向けて、大きな一歩を踏み出したと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度はイスタマイシン類の生合成酵素の機能解析を進め、DOIAが配糖化されてから2つ目のアミノ基が導入することを明らかにする。また、これら酵素の基質認識機構に興味が持たれるため、結晶化して構造解析を進める。 また、昨年度に手掛かりを得た、4'-デオキシブチロシン生合成において4'位のデオキシ化に関わると推定された酵素の機能構造解析を進める。また、アプラマイシン生合成における特徴的な変換反応をになうと推定した酵素の機能解析を進める。 さらに、今後のアミノグリコシド抗生物質の生合成研究の進め方として、新たな方法論等を考案する。
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