2019 Fiscal Year Annual Research Report
Involvement of 12alpha-hydroxylated bile acids in the onset and aggravation of fatty liver
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19H02900
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
石塚 敏 北海道大学, 農学研究院, 教授 (00271627)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
相沢 智康 北海道大学, 先端生命科学研究院, 教授 (40333596)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 胆汁酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
肝硬変や肝がんのきっかけとなる非アルコール性脂肪肝疾患の頻度は年々増加しており、その発症には脂質蓄積の亢進の上に、炎症・繊維化の惹起が積み重なると考えられている。脂肪肝モデルとして汎用される高脂肪食摂取でも炎症・線維化が弱いながらも生じているため、上記2つの段階を明確に区別できない。一方、我々は、摂取エネルギー過多で起こる12α水酸化胆汁酸代謝を模倣することで独自の脂肪肝モデルを確立した。この新規脂肪肝モデルは、軽微な胆汁酸負荷で誘導される単純性脂肪肝で、炎症や線維化は見られず、通常食摂取と比較しても摂食量や体重の違いがない単純性脂肪肝であり、脂肪肝の極めて早い段階で起こる症状を再現できるモデルである。一次胆汁酸であるコール酸(CA)の混餌投与(0.5 g/kg飼料)のみで脂肪肝を誘導できる。CAは高脂肪食摂取時に胆汁中に選択的に分泌される12α水酸化胆汁酸であり、加齢に伴い一次胆汁酸中の存在比が増加する分子種でもある。胆汁ではタウロコール酸(TCA)、小腸内や門脈ではTCAまたはCA、大腸内ではデオキシコール酸(DCA)と形を変えて存在する。CA脂肪肝では、炎症性サイトカインや線維化指標であるI型コラーゲンなど結合組織関連タンパクの発現増加は無く、明確な1stヒットのモデル、即ち早期の脂肪肝と考えられる。脂質や糖の過剰摂取で起こる脂肪肝に関与し、内因性フルクトース生成を伴うポリオール経路がこの新規脂肪肝モデルで亢進するなど、食餌性の脂肪肝発症初期を反映する様々な特徴を有している。そこで本研究では、この新規脂肪肝モデルを含む複数の脂肪肝モデルを用いて脂肪肝の発症及び悪化に関わる新たな経路解明、特に12α水酸化胆汁酸の役割を検証する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コール酸(CA)の混餌による脂肪肝誘導時に、ポリオール経路の初発段階を担うアルドースレダクターゼ(AR)阻害剤エパルレスタットを投与し、CA脂肪肝の発症が抑制されるかを検証した。WKAH/HkmSlc雄性ラット(3週齢)を予備飼育後、試験食としてCA(0.5 g/kg飼料)とAR阻害剤(0.5 g/kg飼料)の組み合わせでいずれも混餌として4群を設定した(各群n=6)。AR阻害剤の混餌料については、以下の考え方で設定した。すなわち、体重を常に最終日の200gだと仮定して固定すると、2週間(14日間)の阻害剤必要量は、 50 mg/kg/day × 0.2 kg × 14 day = 140 mg 摂食量が2週間で200gなので、阻害剤添加量をx%とすると、 140mg = x% /100 (100分率を割合に変換) × 200 g (摂食量)× 1000 (mgに変換) x = 0.07 % 最大0.1%程度の添加量が可能であるが、副作用として摂食量の低下が危惧されるため、CAと同じ0.05%(0.5 g/kg飼料)の添加が適切と判断した。2週間の試験期間で摂食量及び体重を経時的に記録したところ、いずれの群間でも有意差は観察されなかった。解剖時に肝臓脂質を測定した結果、どちらもCA摂取により1.5倍程度の濃度増加が観察された。一方、AR阻害剤の摂取はこれらの数値に影響を及ぼさなかった。これらのことから、ポリオール経路の初発段階であるARはCA誘導性脂肪肝の発症に必ずしも関与しないと推察された。一方、高脂肪・高ショ糖食の摂取による耐糖能における12α水酸化胆汁酸の関与について検討したところ、体循環血中の12α水酸化胆汁酸濃度とインスリン分泌に正の相関があることを見出した。この時、肝臓相対重量が増加することから、肝臓での糖取込における12α水酸化胆汁酸の関与が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
炎症を誘導するためリポ多糖(LPS)をCA脂肪肝に投与すると、対照飼料を摂取したラットよりも顕著な血漿ALT活性の増加を認めた。このことは単純性脂肪肝であっても炎症誘導により重篤となる可能性を示す。そこで、LPS曝露だけでなく、デキストラン硫酸ナトリウムによる消化管バリヤ脆弱化、ツニカマイシンによる小胞体ストレス[Xiong Xら J Hepatol 2014]等による炎症・肝繊維化系を用い、これらのストレスに対する応答に関してCA摂取の影響を評価し、違いが見られたものについてはその機構を解析する。CA摂取ラットの肝臓を用いたメタボローム 解析を実施して、脂質蓄積に関わる代謝物の評価をもとに、その経路を明らかにする。また、これまでに実施した実験での各部位の胆汁酸組成解析をもとに胆汁酸代謝を詳細に比較すると、門脈血と体循環血における胆汁酸濃度の大きな違いが明らかになった。これまで、門脈血を用いた胆汁酸組成評価を実施した論文はほとんどないことから、摂食に伴う胆汁酸濃度及び組成の経時的な変化を門脈カニュレーションラットを用いて評価する。また、12α水酸化胆汁酸の脂肪肝発症における寄与を確実なものとするため、高脂肪食摂取時の胆汁酸代謝と肝脂質蓄積及びその関連因子の関係を明らかにする実験を行う。
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Research Products
(11 results)
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[Presentation] Ingestion of difructose anhydride III reduces secondary bile acid concentration in rat large intestine.2019
Author(s)
Lee DG, Hori S, Kohmoto O, Kitta S, Yoshida R, Tanaka Y, Shimizu H, Takahashi K, Nagura T, Uchino H, Fukiya S, Yokota A, Ishizuka S.
Organizer
Kern Lipid Conference 2019
Int'l Joint Research
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