2020 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of Improvement of quolity of life (QOL) in the aged subjects through oral zinc ingestion
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19H02903
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
駒井 三千夫 東北大学, 農学研究科, 名誉教授 (80143022)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白川 仁 東北大学, 農学研究科, 教授 (40206280)
庄司 憲明 東北大学, 歯学研究科, 准教授 (70250800)
佐藤 しづ子 東北大学, 大学病院, 助教 (60225274)
島崎 伸子 岩手医科大学, 歯学部, 常任研究員 (30337258)
西内 美香 尚絅学院大学, 総合人間科学系, 准教授 (50839321)
酒井 久美子 大分大学, 医学部, 客員研究員 (60225753)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 亜鉛 / 唾液 / 炭酸脱水酵素 / 味覚障害 / ヒト遺伝子多型 |
Outline of Annual Research Achievements |
味覚機能や摂食調節における亜鉛の役割の解明は、まだ研究途上にある。味覚における亜鉛の役割は、唾液分泌と味細胞の機能の面から亜鉛酵素である炭酸脱水酵素(Carbonic anhydrase (CA))活性を介している部分が大きいと推定されている。これまで、ラットの亜鉛欠乏時には唾液中の総CAの分泌濃度が低いこと、舌の味受容膜における総CA活性が低いこと、等を証明してきた。しかし、正常な味覚機能と食欲調節を担う唾液中の亜鉛結合タンパク質の解析はまだ不十分である事と、味覚障害患者の血清亜鉛値が必ずしも低値となっていないため新たな指標が必要である事などから、当研究課題の申請となった。味覚健常者113名、味覚障害者46名の各種亜鉛関連因子の解析を行ったところ、唾液中総亜鉛濃度は、健常者と比べて味覚障害患者で有意に低下した。一方で、唾液中遊離亜鉛濃度は、健常者と味覚障害患者には有意な差は認められなかった。また、唾液中の結合型亜鉛濃度は、一般被験者に対し味覚障害患者で有意に低下していた。唾液中総CA活性は、一般被験者に比べて味覚障害患者で有意に低下した。唾液中総亜鉛濃度および唾液中タンパク質濃度も同様に健常者に比べて味覚障害患者で低下していたことから、亜鉛酵素であるCAの濃度が健常者に比べて味覚障害患者では低いことが示唆された。唾液中CA活性と唾液中総亜鉛濃度および遊離亜鉛濃度の関連性解析では、健常者では亜鉛濃度が高いほどCA活性が有意に高い関係が見られたが、味覚障害患者では亜鉛濃度(総および遊離とも)が高くなってもCA活性が高くなるという関連性が認められなかった。このことから、味覚障害患者ではCAVIタンパク質と亜鉛の親和性に問題がある可能性も考えられたが、証明するには遊離型亜鉛動態を探るなどのより詳細な研究が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1)味覚機能における遊離亜鉛イオンの役割: ヒト被験者を用いる研究では、健常人のほかに東北大学病院での亜鉛欠乏性味覚障害患者に対して亜鉛補給治療を行った4週目の唾液をサンプリングして、前年度と同様の方法でCA 6 (= Gustin) とCA2の濃度を測定し、その1日当たりの分泌量を推定する予定であったが、これはコロナ禍の安全対策のためサンプリングが不可能となった(患者の唾液のみを採取できた)。 2)遊離亜鉛イオンによる摂食調節機構の解明: 亜鉛経口摂取による脳の視床下部における摂食調節やエネルギー代謝に関連する神経伝達物質とホルモン等の動態をGC-MS/MSを用いてメタボローム解析を行う予定であったが、最終年度の唾液プロテオーム解析に変更した。 3)唾液中の遊離亜鉛イオンとタンパク質結合型亜鉛の動態解明: 唾液中のタンパク質は、亜鉛過不足状態の違いにより動態が異なることが推察されるための解析。この解析は、遊離型亜鉛イオンの動態の精確な測定が難しいことが分かったため断念して、翌年度の唾液プロテオーム解析に変更した。
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Strategy for Future Research Activity |
1)味覚健常者113名、味覚障害者46名を確保できたので、この被験者についての各種亜鉛関連因子の解析を行う事が可能となった。①先ずは唾液中総亜鉛濃度、遊離亜鉛濃度、結合型亜鉛濃度の測定方法に関する分析の正確さの検証が必要である。 2)亜鉛関連タンパク質の検出は、近年唾液プロテオーム解析法が「かずさDNA」で開発されたため、最終年度にここに解析を依頼することとなった。CAをはじめとした亜鉛関連タンパク質の網羅的な解析が可能であることが確認できたため、当初の軌道を修正して進めることとした。 3)味覚障害は、血清亜鉛濃度の指標だけでは判定できないため、新しい指標を開発することがこの研究の原点である。唾液中の亜鉛濃度(総および遊離とも)だけでも指標とはならないようであることが分かったため、今後のターゲットをCAVIを中心に進めるべきであることが示唆された。今後の研究の方向は、如何にして唾液中のCAVIを簡易検査で検出して、味覚障害の判定に使い、国民の健康推進QOLの向上につなげていくかになるであろう。
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Research Products
(7 results)