2020 Fiscal Year Annual Research Report
メタボライト-シグナル連関による骨格筋恒常性維持機構の解明とその食品分野への応用
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19H02908
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山内 祥生 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (00444878)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 栄太 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (00803157)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 骨格筋 / メタボライト |
Outline of Annual Research Achievements |
加齢性筋萎縮症(サルコペニア)は、高齢者の寝たきりや要介護状態につながる主要な危険因子となっており、その予防は健康寿命延伸の最重要課題の一つである。また、骨格筋は、運動機能だけでなく、代謝の中心的な臓器としても重要な役割を担っている。したがって、筋量維持は、サルコペニア予防だけでなく、糖尿病をはじめとするメタボリックシンドロームの予防という面でも重要であり、ヒト骨格筋の恒常性維持機構の理解と、それに基づいた薬に頼らない筋萎縮予防の重要性が増している。臨床的知見や遺伝学的解析よりメバロン酸経路が骨格筋恒常性維持に重要な役割を果たしていることが明らかになっているが、その分子機構は十分に理解されていない。本研究は、骨格筋が産生するメバロン酸経路メタボライトによるシグナル制御と骨格筋恒常性について解析を行い、サルコペニアをはじめとする筋萎縮の予防やそれを可能にする食品成分の探索を行うことを目的としている。 本年度は、昨年度に同定したメバロン酸経路依存的に発現制御される複数の遺伝子の発現制御機構について解析を行った。ヒトiPS細胞由来骨格筋細胞をスタチンとともに複数のメバロン酸経路メタボライトで処理した。その結果、メバロン酸経路によって産生されるゲラニルゲラニル2リン酸の添加によってスタチン依存的な筋細胞障害が抑制された。一方、メバロン酸経路の後期生成物であるスクアレンやコレステロールにはそのような効果は認められなかった。また、ゲラニルゲラニオールは、スタチン依存的に発現制御される遺伝子の発現をコントロールと同程度に回復する効果も有していることが示され、ゲラニルゲラニル2リン酸がスタチン依存的な筋障害や遺伝子発現制御に関与するメタボライトであることが示唆された。さらに、これら遺伝子の発現制御機構について解析を行い、これらの遺伝子の発現制御に関与する転写因子や転写共役因子を同定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度に同定したメバロン酸経路依存的に制御されるシグナルや遺伝子について、個別に解析を行い、その発現制御機構が明らかなりつつある。また、これらの遺伝子の発現制御に関与するメバロン酸経路代謝産物を同定した。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒトiPS細胞由来骨格筋細胞においてメバロン酸経路依存的に発現制御される遺伝子として同定された遺伝子の機能解析を行うとともに、その発現制御機構の詳細な分子機序を明らかにする。機能解析では、これら遺伝子のノックダウン実験や過剰発現実験を行い、骨格筋細胞に及ぼす影響を解析する。また、これらのタンパク質の細胞内局在や相互作用タンパク質についても解析を行う。発現制御解析では、本年度明らかにした転写因子や転写共役因子を介した転写制御機構を中心に解析を進める。
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