2019 Fiscal Year Annual Research Report
培養細胞における「多様化誘導型」抗体ディスプレイシステムの開発
Project/Area Number |
19H02924
|
Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
冨塚 一磨 東京薬科大学, 生命科学部, 教授 (40444640)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀田 秋津 京都大学, iPS細胞研究所, 特定拠点講師 (50578002)
香月 康宏 鳥取大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90403401)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 抗体医薬 / 免疫グロブリン / CRISPR-Cas9 / ゲノム編集 / 相補性決定領域 / 表現型スクリーニング / ヒト人工染色体 / 染色体工学 |
Outline of Annual Research Achievements |
抗体は今や最も注目されるモダリティ(治療手段)と言えるが、一方で標的抗原の枯渇など課題も多く、従来法では取得困難な、新規な活性や機能を持つ抗体を獲得する技術の開発が待ち望まれている。本研究では、表現型スクリーニングが困難という抗体創薬のボトルネックを解消するため、一千万~一億の多様な特異性をもつ抗体分子を発現する培養細胞ライブラリ構築、およびそれを用いた表現型スクリーニングによる機能抗体取得からなるプラットフォーム技術の開発に取り組む。2019年度は、モデル遺伝子で目標とする1千万を超えるライブラリサイズの実現性を示すとともに、ヒト抗体(重鎖+κ軽鎖)cDNAの発現ユニットを1コピー保持するヒト人工染色体(HAC)ベクターの構築を完了した。さらに予備的ながら、HACベクター上のκ軽鎖CDR3領域の12塩基(4アミノ酸)ランダム化にも成功した。全体として当初計画を上回る進捗であり、2020年度末までの技術基盤確立と特許出願完了が十分可能と考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
モデル遺伝子/細胞(ジストロフィン遺伝子コード領域/293T細胞)について、相同組換えによるCRISPR-Cas9挿入変異導入の条件検討を行い、30%以上の効率で30塩基(10アミノ酸)ランダム化を起こさせることに成功した。30%の効率とは、ゲノム編集48時間後に調製したゲノムDNAを鋳型として標的領域をTAクローニング、得られた大腸菌クローンのうち30%で期待通りの30塩基ランダム化が起こっていることを意味する。達成された多様性は、細胞1億個あたり少なくとも1千万以上と考えられ、当初目標の1千万以上のライブラリサイズの実現性が示された。 一方、ヒト抗体(重鎖+κ軽鎖)cDNAの発現ユニットを1コピー保持するヒト人工染色体ベクターの構築も順調に進んでいる。使用頻度の高い生殖系列VDJ(重鎖)断片、およびVJ(κ軽鎖)断片の組み合わせによりデザインされた可変領域配列+IgG1定常領域を含むヒトIgG1分泌型-cDNA、ヒトIgG1膜結合型(Fc領域C末端部位にGPIアンカー配列を連結)-cDNAについて発現ユニット(CMVプロモーター)を構築した。さらにこれら発現ユニットの21番染色体由来ヒト人工染色体の遺伝子挿入部位(loxP配列)への挿入を実施し、①IgG(HK)s-21HAC2/CHO、②IgG(HK)m-21HAC2/CHO、IgG(HK)m-21HAC2/293Tの3種の細胞株樹立を完了した(s:分泌型、m:膜結合型)。加えて予備的ながら、①IgG(HK)s-21HAC2/CHOのκ軽鎖CDR3領域を標的として、CRISPR-Cas9挿入変異導入による12塩基(4アミノ酸)のランダム化に成功した。重鎖CDR3領域を標的としたgRNAの設計、評価(Cel-1アッセイ)も完了しており、2020年度よりCRISPR-Cas9挿入変異導入実験を開始する計画である。
|
Strategy for Future Research Activity |
<今後の研究計画>2019年度の成果を土台に、2020年度以降、以下①~⑤の研究に取り組む計画である。なお2020年度末までの特許出願完了を予定している。 ①(基盤技術確立・有用性実証)1コピー/膜結合型ヒト抗体について、まず1千万程度(1億細胞あたり)のライブラリサイズを実現し、抗GFP抗体の取得を試みる。 ②(多様性向上検討:1億細胞あたり1億のライブラリサイズ目標)細胞あたりのヒト抗体遺伝子(重鎖+軽鎖、細胞膜提示型)多コピー化による多様性向上検討。 ③(多様性向上検討:同上)相同組換え促進活性を有するSV40エンハンサー配列の塩基配列ランダム化に対する効果検討。 ④(表現型スクリーニングの実施)ヒト抗体(重鎖+軽鎖、細胞膜提示型)細胞ライブラリ(HEK293)を用いたWnt/βカテニンシグナル制御抗体スクリーニング。 <実用化の見通し>従来技術による抗体創薬は標的抗原枯渇に直面しているため、ユニークな活性・機能を持つ抗体を獲得する技術に対するニーズは非常に高い。本技術が確立し強力な知財が確保できれば、大手製薬企業や創薬ベンチャーへの技術導出や共同研究による新規医薬候補品取得に繋がると期待される。
|