2019 Fiscal Year Annual Research Report
ムギ類における出穂期不安定化機構の分子遺伝学的解明
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19H02931
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
加藤 鎌司 岡山大学, 環境生命科学研究科, 教授 (40161096)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西田 英隆 岡山大学, 環境生命科学研究科, 准教授 (30379820)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 育種学 / コムギ / オオムギ / 出穂期 / 分子遺伝学 |
Outline of Annual Research Achievements |
コムギ系統「超極早生」の出穂期不安定性に関わる早生遺伝子として特定したPCL1とは異なる新規早生遺伝子exh-2を特定するために,「超極早生」×「Geurumil」の雑種後代を用いて,DArT-seq法によるゲノムワイドなバルク分離分析を行った。その結果,新規早生遺伝子(exh-2)の座乗領域の候補となり得るゲノム領域を複数個(1B, 5A, 5D, 6B, 7A染色体)検出することができた。また,「ユメシホウ」および「アサカゼコムギ」の遺伝的背景で新たに作出したPCL1に関する同質遺伝子系統(NILs)の出穂日を調査した結果,「ユメシホウ(PCL1全劣性ホモ型)」が原品種と比べて4日程度早生になったが,極早生にならなかったことから,本系統がExh-2を持つことが示された。そこで,新たなマッピング集団として「超極早生」×「ユメシホウ(PCL1全劣性ホモ型)」のF2集団を作出した。一方,「アサカゼコムギ(PCL1全劣性ホモ型)」では系統によって出穂日が異なり,原品種と比べ4日もしくは20日程度早生になる2群の存在が明らかになった。両群間での早生化効果の相違はexh-2遺伝子型の違いに起因すると考えられるので,現在,マッピング集団を育成中である。 日本のオオムギ品種の早生化に大きく寄与したHvPhyCとPpd-H1が出穂期不安定化に及ぼす効果を解明するために,「春播型早木曽2号」の遺伝的背景をもち,HvPhyCとPpd-H1の対立遺伝子組合せが異なるNILsを育成中であり(2種類は育成済み)、現在栽培中のB4F2集団からHvPhyC早生型・Ppd-H1晩生型系統を選抜予定である。また,遺伝的背景が「春播型早木曽2号」であり,「Golden Promise」の形質転換能を有するNILsを育成中である。現在栽培中のB2F1集団の形質転換能QTLs保有個体に戻し交雑を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コムギ系統「超極早生」が保有する第2の早生遺伝子exh-2については、DArT-seq法を利用したゲノムワイドなバルク分離分析により,座乗領域の候補となり得るゲノム領域を複数個検出することができている。加えて,「ユメシホウ」および「アサカゼコムギ」の遺伝的背景で新たに作出したPCL1に関する同質遺伝子系統の解析結果に基づき,exh-2特定の新たなマッピング集団を作出できたので,研究期間内に遺伝子を特定できると考えている。 オオムギについても系統育成が順調に進んでおり、これらの材料を用いた出穂期の解析も進行中であることから、当初の研究目的を達成できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
コムギの早生遺伝子PCL1については,「ユメシホウ」および「アサカゼコムギ」の遺伝的背景でNILsを作出したので,今後は,これらの系統を用いて播種期移動実験,および模擬暖冬条件下での出穂の不安定性を解析する予定である。加えて遺伝子発現の変動を解析する予定である。 第2の早生遺伝子exh-2については、これまで供試してきた「超極早生」×「Geurumil」の雑種後代に加え,「超極早生」×「ユメシホウ(PCL1全劣性ホモ型)」の雑種後代をマッピング集団として利用可能になったので,座乗領域の候補となり得るゲノム領域における配列多型を集中的に解析し、exh-2と密接に連鎖するDNAマーカーの特定を進めることにより,候補遺伝子が絞り込まれると期待している。 オオムギも含めて出穂期の解析が進行中であることから、今後、出穂期遺伝子型と出穂期不安定性との対応を詳細に解析する予定である。
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Research Products
(6 results)