2020 Fiscal Year Annual Research Report
作物の放射性セシウム吸収に関わる地質学的要因の解明
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19H02938
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
根本 圭介 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (40211461)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤本 優 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (60554475)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 放射性セシウム / 地質 / 作物 |
Outline of Annual Research Achievements |
福島原発事故から9年が過ぎ、セシウム吸収抑制対策としての水田へのカリウム無償散布が打ち切られようとしている一方で、避難区域への帰還が始まり、予期せぬ作物のセシウム吸収被害の発生が懸念されている。今回の原発被害の舞台となった阿武隈地方は、中生代白亜紀に生じた花崗岩と、第三期中新世に生じた玄武岩の、異なる2種類の地質を有する。ある作物がセシウムを吸収し易いかどうかは「作物と土壌タイプの組合せ」で決まり、「土壌タイプ」を決める主要な要因として「土壌の母岩」が重要な役割を果たしていると考えられる。本研究では、このメカニズムを解明するとともに、地質情報と作物別のセシウム吸収リスクから福島の農地のゾーニングを行い、被災地の農政や営農に資する。 本年度は、福島県伊達市と連携し、同市内の水田90カ所および山林70カ所を対象として土壌の緩効性カリウム(熱硝酸処理によって抽出したカリウム)濃度を指標として各地点の母材を推定、セシウム吸収リスク評価を行った。その結果を事故当年の伊達市における玄米のセシウム吸収被害の分布と比較したところ、事故当年に 300Bq/kg を超える玄米が収穫された水田の分布は、今回の分析によりリスクが高いと判断された地域とよく一致しており、本リスクマップの有用性が確認できた。 本年度はさらに、イネのマッピング集団を用いてセシウム吸収のQTL解析を行った。コロナ禍のために規模縮小を余儀なくされた関係から、玄武岩質土壌を用いて実験を行ったところ、3つの集団から第2、4、6染色体に座乗するQTLが同定された。引き続き、それらの候補遺伝子の探索を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
山林土壌の入手が予定どおりに進まなかった。昨年度に引き続き、今年度もコロナ禍のために引き続き山林土壌採取が出来ない状況が続き、最終的には、手持ちの土壌資材での実験が可能となるようポット実験のスケールを縮小した上で、繰り越しを行うことによって、予定していた実験を切り抜けざるを得なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的な研究計画に変更はない。昨年来問題となっている実験用土壌については、引き続きコロナの状況を見極めつつ、現地の協力のもとに入手を図っていきたい。
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